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一斉指導学習から個別確認学習へ――新しいオンライン学習の仕組み as/4079.html
森川林 2020/04/18 04:59 

 これまでの学校や学習塾の授業の形態は、先生が何十人かの生徒を一斉に教える一斉指導学習という形でした。
 進度や理解度の異なる多数の子供たちを、どの子も飽きさせずに授業をするということが、教師の力量のように考えられていました。

 しかし、これは過去の、黒板とチョークと教科書しかないという環境的制約から生まれた、やむをえざる教育形態だったのです。
 これが教育1.0の世界です。

 この一斉指導学習によると、できない子はどうしても全体の授業の流れから置いていかれるようになり、できる子は全体の授業の流れに退屈するようになります。

 その流れから外れた子供たちをカバーするために、補習塾や進学塾や家庭教師という教育が必要になっていたのです。

 一斉指導学習の弱点を根本的に克服する形態は、個別指導学習です。
 しかし、個別指導学習は、先生1人に対して、生徒1人ないし2人が授業を受けるという形ですからコストがかかります。
 そのため、この個別指導学習を学校教育として保障することはできません。
 その妥協策として考えられるのが少人数学級ですが、30人学級が20人学級になり、10人学級になっても、その10人のそれぞれの異なる進度に対応できる授業はやはり難しいのです。

 一斉指導学習のまま学習の能率を上げるため、よくできる子供たちだけを集めた選抜クラスや進学塾、進学校という形態は、一つの解決策になっています。
 しかし、できる子だけを集めたクラスでも、次第に進度の違いは生まれてきます。

 また、できる子が一様にできるのに対して、できない子は多様にできないので、少人数学級の人数をどれだけ少なくしても、個々の生徒に対応することが難しくなります。

 ところで、インターネットの普及は、一斉指導学習のレベルを大きく変えました。
 これをインターネット教育2.0と言ってもいいと思います。

 例えば、スタディサプリのようなビデオ授業が低コストで提供できるようになると、これまで現実のな学校や塾の教育現場で行われていた先生による授業は、その映像授業に対抗することができなくなります。
 学校の先生が工夫する授業よりも、よく準備された映像授業の方がわかりやすく面白い場合が多いからです。

 しかし、ではなぜ子供たちが学校に行くかというと、それは友達がいるからです。
 先生の授業自体は、よく準備された映像授業より面白くないとしても、それを一緒に聞く友達がいて、質問をされたり、うまく答えられたり、答えられなかったり、笑ったり、笑われたりというコミュニケーションが楽しいから、学校の授業の方が映像授業よりも魅力があるのです。

 しかし、勉強の内容に関しては、子供のそれぞれの進度や学力に対応していない一斉指導は、教育の形は取っていてもほとんどの子にとって肝心の学ぶ場面が少なく学ぶ必要のない時間が多すぎる状態になっているのです。

 しかし、ここにきてインターネットの進歩は、教育の新しい形態を可能にしました。
 これをインターネット教育3.0と言ってもいいと思います。

 それは第一に、学校の現実のクラス同じように、何人かの生徒が一緒に学べる双方向のビデオ会議システムが利用することができるようになったことです。
 そして第二に、更に重要なことは、一斉に勉強する場にいながら、先生の個々の生徒に対する個別対応が可能になったということです。
 これが、言葉の森が現在おこなっている少人数クラスによる学習です。

 この少人数クラスでは、5、6人の生徒が自分の目標とする勉強を自主学習として行います。
 現在の参考書や問題集は、教科書よりも詳しく作られていることが多いので、解説を読めば自主学習できる分野がほとんどです。
 一斉指導学習の代わりに一斉個別演習という形を取れるのが、この少人数クラスの学習方法の利点です。

 そして、この一斉個別演習をしている子供たちに、先生が一人ひとりその子の取り組んだ勉強内容について確認をしていくのが個別確認学習です。

 この個別の確認によって、先生はその子がどの程度まで学食の内容を定着させているか確認することができます。
 そして、その子の学習の定着度に応じて、学習の方向指示することができます。

 これまでの教育1.0の世界では、生徒は先生の授業を受け身で聞く形で学習が進められていましたが、これからの教育では生徒が自主的に勉強する力をつけることが必要になります。
 この自主学習力をつけるのが少人数クラスの一つの目標です。

 また、子供が自主学習では理解できない問題や解法に遭遇したときにどうするかというと、それは先生に聞くのではなく保護者に聞くようにするのです。

 小中学校の学習内容は義務教育ですから、保護者もかつて学んだことがあるものです。
 だから、勉強の現役から離れた社会人になってからは思い出すのに時間がかかることがあったとしても、基本的に子供の勉強の分からないところは親が教えることができるのです。

 もちろん教えると言っても、一斉指導学習のように最初からカリキュラムに沿って全部教えるのではなく、子供が自主学習でわからなかった問題や解法だけを一緒に考えてあげるということです。
 親が子供に勉強を教えるのではなく、子供が自主学習で取り組んだ分からないところだけを一緒に考えてあげるのであれば、親の負担は大きくはありません。

 この保護者の家庭教育力を高めることが、少人数クラスの勉強のもう一つの目標です。
 子供は、学校や学習塾の授業で、先生にわからないところを質問することはなかなかできないので、家庭で親に聞ける体制を日常的に作っておくといいのです。

 親や友達のように身近な人に聞けるのがいいのは、「わからない」ということは、何がわからないか自分でもよくわからないというのが本質だからです。
 そのため、先生に聞くよりも、友達どうしで聞き合うことの方がよくわかるということも多いのです。

 親が教えられないような内容が問題集にある場合は、本当であれば、そういう勉強を子供にさせること自体に問題があるのですが、それを批判しても始まらないので、その場合は、親が先生(言葉の森の場合は事務局)に質問をするのです。

 このような形で勉強を進めていけば、子供には自主学習力がつき、保護者には家庭教育力がつき、先生は5、6人の子供たちが楽しく勉強できるようなクラス運営をし、個々の生徒の学習の定着度を確認するという仕事に専念することができます。

 この先生の仕事は、ある程度の学力と子供たちとのコミュニケーションをとれる人であれば誰でもできます。
 この教育法は、先生が事前に授業の内容をじっくり準備するというような専門化された方法ではなく、個々の生徒の既に取り組んだ問題をあらかじめ確かめておき、それらの問題を子供たちが正しく理解しているかどうかを確認する方法だからです。

 子供たちの1回の勉強時間は、45分から1時間です。
 この時間の間に、友達と楽しいコミュニケーションを交わす時間が10分程度、自主学習の演習に取り込む時間が30分から40分、先生が生徒の学習の個別確認をする時間が1人5分から10分という割合で進めていけば、生徒の交流と、演習による自主学習と、先生の個別学習確認を両立させることができます。

 こういうクラス運営をするための人数が、生徒5、6人に先生1人という割合です。
 3人以下では子供どうしの交流が少なくなり、7人以上では個別確認学習が手薄になります。
 また、この一斉個別演習と個別確認学習を両立させるツールが、メインルームと複数のブレイクアウトルームを利用するというウェブ会議の仕組みなのです。



コメント欄

森川林 2020年4月18日 10時36分  
 アメリカは、オンライン教育の先進国のように思われていますが、ほとんどの学校は意外と初歩的なオンラインの利用にとどまっているようです。
(参考漫画:世界各地の親が「ネット授業」に悲鳴を上げる訳 https://toyokeizai.net/articles/-/344939 )

 授業をオンラインで流すやり方が大部分で、低学年の後はすぐに飽きてYouTubeを見てしまう、というようなことも多いようです。

 こういうウェブで授業を流すだけのオンライン学習で勉強ができるのは中学生以上で、そういう子はもともとウェブの授業がなくても自学自習ができる子です。

 小学生から中学1年生ぐらいまでの生徒は、先生や他の生徒とのコミュニケーションがなければ勉強がはかどりません。
 そういう少人数のオンライン学習が組織的にできるところは、まだありません。
 ほとんどは、オンライン教育2.0のレベルで対応しているのです。

nane 2020年4月18日 11時6分  
 オンライン学習と言っても、ほとんどは授業をオンラインで流す形のものです。
 生徒一人ひとりに質問をしたり、生徒がそれに答えたりするようなものはありません。
 そういう映像授業についていけるのは、勉強に自覚ができた年齢の子か、親が監督している子だけです。
 ほとんどの子は、オンライン授業よりも、自分の好きなYouTube番組を見てしまうのではないかと思います(笑)。

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