日本人以外のすべての民族が、子音を含む言語だけを左脳の言語脳で処理し、ほかの音は全部右脳で処理するのに対して、日本人だけは、子音の言語だけでなく、母音だけの音、自然の音、邦楽の音、感情の動きなど、楽器音や雑音以外のほとんどの音を左の言語脳で処理しています。この日本人の脳の仕組みを日本語脳と言います。
では、その日本語脳を勉強を生かすためには、どうしたらよいでしょうか。
まず最初に考えられるのは、勉強の邪魔にならないような脳の使い方です。
日本人は、言語だけでなく、自然の音や、琴・尺八などの邦楽の音も、左脳の言語脳で処理します。したがって、考える勉強をしているときに、波の音や鳥の声又は琴の音色などが聞こえると、それらの音が言語処理の左脳に入ってくるので、勉強が進まなくなります。
ある会社で、正月に邦楽を流して仕事をしたところ、社員から仕事ができないという苦情が多く出て取りやめになったことがあるそうです。
作文を書いているときは、脳をかなり酷使しているときなので、このような音が流れない環境で書く作業を行うことが大切です。
また、人の話し声は、小さな声でも左の言語脳を刺激します。したがって、勉強をしているときにはテレビなどは消すか、あるいは各人それぞれのヘッドホンで聞くというやり方をする必要があります。
よく音楽を聴いて、ながら勉強をする人がいますが、思考作業と両立する音は、雑音か楽器のみの西洋音楽です。しかし、不快な音は感情を刺激し、日本人の場合は感情も左脳で処理するので、不愉快な雑音では勉強の邪魔になります。
すると、ながら勉強にいい音は、聴きなれた西洋音楽になるので、クラシックなどが静かに流れている中で勉強するのがいいということになります。しかし、もちろん、だれにとってもいちばんいいのは、音のない静かな環境で勉強をすることです。
次に、日本語脳を、勉強を進めるのに生かすということで考えてみます。
頭をよくすることにも、日本語脳を活用することができます。
その前に、「頭をよくする」といった場合の「頭のよさ」とは何かということを考えてみます。
私は、頭のよさというのは、(1)物事を理解する力、そして、(2)物事を創造する力、更にもう一つ付け加えるならば、(3)物事を表現する力、の三つになると思います。理解力、創造力、表現力の三つです。
理解力というのは、主に、知識を吸収する力です。創造力というのは、吸収した知識を組み立て直す力です。表現力というのは、その組み立て方をわかりやすく美しく表現する力です。
知識の吸収は、左脳の言語脳で処理されますが、これを左脳で処理するだけでなく、右脳のイメージ脳や音楽脳に結びつけていくことが、これらの力を発達させる要因になっていると思います。つまり、頭をよくするということは、左の言語脳と右のイメージ音楽脳との連携をよくすることなのです。
こう考えると、暗唱というのは、言語を一種の音楽として右脳に結びつける働きがあります。また、言葉の森で作文の前に書いている構成図は、言語を右脳のイメージ脳に結びつける働きがあります。つまり、暗唱練習や構成図の練習が、頭をよくすることに結びついているのです。暗唱は主に理解力育成の面で、構成図は主に創造力育成の面で役に立ちます。
ただし、創造力という能力が現実的な力として発現するまでには時間がかかるので、構成図が創造力に役立つというのは、ある程度の年齢になって知識の蓄積が進んでからになると思います。