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 日本の未来の見取り図(4)―フリーエージェント社会という新しい内需 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
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日本の未来の見取り図(4)―フリーエージェント社会という新しい内需 as/1053.html
森川林 2010/10/24 09:01 
 堅い話が続きますが、もうしばらくおつきあいください。(6)まで続く予定です。(^^ゞ 全部読む時間がない方は、太字の箇所だけお読みください 。

 子供たちの勉強を考える場合、数年先の受験を考えるとともに、数十年先の日本の未来も考えておく必要があります。 そして、日本の未来とは、実は世界の未来の最先端なのです。



 アメリカの新しい産業と思われていた金融工学はバクチ化しました。また、金融工学産業は、もともと何の創造もないゼロサムの産業でした。

 IT産業はこれからも発展しますが、これはITという新しい産業分野における古い工業社会の再生でしかありません。

 かつての自動車産業で寡占化が進んだように、IT産業も寡占化が進む進み、しかもデジタル的産業であるためにその速度は極めて速いものになっています。

 マイクロソフトやグーグルのように、もとは小さな企業が一挙に巨大な企業に成長し、そのサービスが行き渡るとその社会的役割を終えるようになります。

 IT産業は、今はまだ創造的な面がありますが、やがて道路や電気・水道・ガスなどの社会的に重要ではあるが目立たないインフラになっていきます。

 例えば、今の日本で、「どんな山奥の村にも電気を送る」ということに情熱を傾ける人がもういないように、IT産業を世界的に支えてきた夢と情熱はもはや半ば終わりつつあります。

 このように、大企業の時代が終わり、金融工学産業とIT産業の時代が終わりつつあるアメリカで、今静かに広がろうとしているのがフリーエージェントの社会です。

 企業に勤め、朝から晩まで忠誠を尽くし、その代償として年功序列と生涯雇用を保証されるというかつての古きよき時代は終わりつつあります。それは、そういう組織的人間を必要とした大企業の時代が終わりつつあるからです。

 大企業の時代が終わりつつあるのは、そのような大企業を必要とした大量の工業製品を需要する物の経済拡大の社会が終わりつつあるからです。

 確かに、まだ中国、ブラジル、インドなど巨大な人口を抱えた国々がその工業社会に入りつつあるので、一見、経済発展の中心がそれらの国々に移行しているように見えます。しかし、それは動いているマネーが巨大になっているだけであり、そこに新しい未来の指針はありません。

 アメリカのフリーエージェント化を推進している力は、自分らしく働きたいという欲望です。これが、これまでの豊かな消費を楽しみたいという欲望を経済の動因とする社会と質的に違うところです。

 何のために働くのかという動機が、給料をもらって豊かな消費生活をするためではなく、働くことを通して自己実現したいということに変わっているのです。

 今のように就職難とリストラの広がる社会では、働くことによる自己実現は夢想のように見えますが、社会の本当の底流はその方向で動いています。

 アメリカのフリーエージェントを構成する自営業者の割合は、全就業者の1割に満たない数ですが、しかし既に社会を支える重要な地歩を占めています。

(フリーエージェントの割合は、「U.S. Economic Account」の「Table 6.7D. Self-Employed Persons by Industry」によるものです。しかし、「フリーエージェント社会の到来」を著したダニエル・ピンクによると、アメリカにおけるフリーエージェントは、全就業者の4分の1で約3300万人と言われています。これはフリーエージェントの定義の仕方の違いによるものと思われます。2010/10/27追加)

 ひと昔前であれば、自営業は大きい企業になる前の過渡期の形態とみなされていました。もちろん今でも自営業者の中には、いずれ規模を大きくしてゆくゆくは上場できるようにしたいと考えている人もいるでしょう。

 しかし、アメリカにおけるフリーエージェントの割合がほぼ一定になっていることを見ると、自営業はそれ以上の成長に向かうより大きな企業への過渡期の姿ではなく、自営業であることをその企業の目的の重要な属性として持つものであることを示しています。

 その目的とは、豊かな消費生活を送ることではなく、自分らしく働くことです。

 アメリカの自営業の中で最も安定しているのが三つの分野です。

 第一は、専門的知識や技術を伴う企業サービスの分野で、この自営業者の人数は約200万人、この分野の全就業者の約20%を占めています。

 第二は、教育、健康などの社会的アシストの分野で、同じく約100万人、10%を占めています。

 第三は、その他で、同じく100万人、10%です。

 わかりやすく具体的に言えば、個人でも始められるような、会計コンサルタント、法律コンサルタント、医者、個人の家庭教師、健康ヒーリング業などが、アメリカのフリーエージェントの中心になっています。

 フリーエージェントとして分類されるものには、このほか、農業、建築業、タレント、芸術家、著述業、外食産業、コンビニ経営などもありますが、今の不況下でも減少せず、企業に勤めるよりも高収入を維持しているのは、前述の三つの分野です。

 ここまで読んで、多くの人は、そういう仕事につけたらいいなあと思ったと思います(笑)。もし確実にそうなれる展望があるなら、そのために、貯金を全部はたいても、借金をしてでも取り組みたいと思った人が多いと思います。

 そうです。フリーエージェントとして働きたいという欲望が、豊かな社会のあとに来る、これからの社会の大きな需要になってくるのです。

 フリーエージェントになるために専門的な知識や技能を身につけたいという「修行」と「起業」が先進国の新しい内需となり、その内需に応える産業が次々と玉突き現象的に誕生してくるというのが、先進国における経済発展の未来図です。(つづく)



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森川林 2010年10月27日 3時0分  
 フリーエージェントの割合が全就業者の1割だという点について、次の説明を追加しました。
====
(フリーエージェントの割合は、「U.S. Economic Account」の「Table 6.7D. Self-Employed Persons by Industry」によるものです。しかし、「フリーエージェント社会の到来」を著したダニエル・ピンクによると、アメリカにおけるフリーエージェントは、全就業者の4分の1で約3300万人と言われています。これはフリーエージェントの定義の仕方の違いによるものと思われます。2010/10/27追加)

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