未来を切り開く新しい産業は、修行(自己の向上)と起業です。
その修行と起業の社会に最も近い位置にいるのが日本です。
そして、生活の中で自己の向上を目指す人が多くなるほど、その社会における起業のチャンスが増えていきます。また、起業して自分らしく働く人が増えるほど、生活の目標が自己の向上になっていきます。
このように考えると、今の子供たちの目指す勉強の道筋がわかってきます。
第一は、あらゆる教科を幅広く学ぶことです。文系だから理数はやらないとか、理系だから文学はやらないなどというのは、工業時代の歯車の一部として働く人間になるための発想です。自ら起業する人は、幅広い教養を身につけておく必要があります。
第二は、自分の好きなことは何かということをいつも意識して探していくことです。
第三は、常に独立の志を持ち続けることです。それは今の会社を辞めるという選択肢だけではなく、会社に勤めながら空いた時間を自分らしい仕事を持つことにあてるということも含みます。
フリーエージェントになるための社会的条件は整っています。
情報時代には、新しい仕事を始めるのに巨額な資金や設備は必要ありません。
昔は仕事を始めるためにオフィスや事務員が必要でしたが、今は自宅のパソコン1台で間に合います。情報化によってそれだけ管理が楽になったのです。
また、宣伝や販売についても、昔は多額の宣伝費やよい立地条件が起業の条件のひとつでしたが、
今はインターネットが1本つながっていれば、大企業と比べて遜色(そんしょく)のない宣伝や販売ができます。
昔は、会社に就職するまでが人生の勝負どころで、いったん大きい会社に入れば、あとは与えられた役割を果たすだけで次第に給料は上がり、役職も付き、そこに一生勤めることができ、退職後の年金も保証されるという社会でした。
そして、社会全体が発展し企業も発展していたので、そういう組織的人間として勤めることが自分自身のチャレンジにもなり、自己の向上にもなっていました。また、企業も社員を教育し成長させることに力を配ってきました。
しかし、今の企業はそうではなくなりつつあります。経済発展のなだらかになった社会では、ルーティンワークをいかに効率よくこなすかに仕事の重点が移っていきます。
それを企業の側から見れば、成長の止まった分野で利益を確保するために、いかにコストを削減するかということに目が向いていくということです。つまり、これからの組織的人間は終身雇用どころか、常にリストラの圧力にさらされながら生きていかなければなりません。
しかし、それは決して悲観的なことではありません。
現代は、工業製品の大量消費の社会が終わり、これまで社会の発展を担ってきた工業時代の企業が、情報産業も含めて、次々と電気・ガス・水道事業のように公共のインフラになっていく時代です。
その結果、余剰になった人的資源は、今後は物作りではなく、人作りに向かうのです。その人作りが、新たな人作りという需要を生み出し、そのようにして、物ではなく人によって支えられる文化が花開く時代が来ます。
言わば、
今は、地球人全員が芸術家になるような時代の前夜にいるのです。まだこの前夜は長く続くかもしれませんが、そのあと新しい夜明けが来ることに多くの人が気づき始めています。