ログイン ログアウト 登録
 読解力の本質とは何か(その3) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1091番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
読解力の本質とは何か(その3) as/1091.html
森川林 2010/12/04 09:47 


 あらゆる事物は、現象的には単なる物でしかありませんが、それが生物の意識によって認識されるとき、比喩の足を持ちます。その比喩の足の多様さが生物の賢さです。

 狼王ロボは、鉄の匂いを、自身の何度かの経験から「罠」の可能性として連想する比喩の足を持っていました。だから、普通の狼が、同じように鉄の匂いを認識しながら罠につかまってしまうところを、ロボは何度もその罠を避けることができました。

 人間の場合も、数の計算に慣れてくると、たとえば、5という数字を、単にリンゴが5個というような意味の5ではなく、2+3としての5、1+4としての6、10/2としての5のように、さまざまな比喩の連想の中でとらえることができます。これが、数を認識する力です。

 図形の問題も同様で、問題を解いているうちに、次第に有効な補助線の連想ができるようになります。図形の問題が苦手なうちは、図形は単にその図形でしかありませんが、連想の足が増えてくると、ひとつの図形がいろいろな構造の中で読み取れるようになります。

 音の認識も似ています。ほとんどの人にとって、音は単にその音でしかありませんが、音の絶対的な認識ができる人にとっては、音はすべての音の中のある絶対的な位置を持った音としてとらえることができます。

 同様なことは、たぶん、犬にとっての嗅覚や、イルカにとっての超音波の感覚についても言えるのでしょう。その意味で、犬は匂いに関しては人間よりも賢く、イルカは超音波については人間より賢い、と言うこともできます。

 しかし、事物の認識の適用範囲が最も広いのは言語です。世界には、匂いや超音波では説明できない現象がたくさんあります。例えば、夕焼けの赤い色は、犬にとってはある種の匂いを伴っているかもしれませんが、あまり有効な認識ではないでしょう。しかし、人間は、その夕焼けの赤さを見て、「明日は晴れらしい」という判断を下すことができます。

 言語とは別の切り口からの有効な認識には、数字や図形による認識もあります。これが、数学をはじめとする自然科学がひとつの学問分野になっている理由です。しかし、ほとんどの人の日常生活と、ほとんどの学問分野の基礎において、最も広い適用範囲を持っているのが言語による認識の力です。

 この言語による認識力の本質は、世界のさまざまな現象に対応する言葉の豊富さであるとともに、その個々の言葉の持つ比喩の足の豊富さでもあるのです。

 では、この言葉の豊富さと、比喩の足の豊富さは、どのようにして育つのでしょうか。(つづく)



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
国語力読解力(155) 

コメント欄

コメントフォーム
読解力の本質とは何か(その3) 森川林 20101204 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
こさしす (スパム投稿を防ぐために五十音表の「こさしす」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
国語力読解力(155) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習