ログイン ログアウト 登録
 コミュニケーション・ラーニング(その3) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1107番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/4
コミュニケーション・ラーニング(その3) as/1107.html
森川林 2010/12/27 11:56 


 作文を書くというのは、勉強の中で最も苦しい勉強だと思います。何が苦しいかというと、始めるときのエネルギーがほかの勉強に比べると何倍も必要だからです。特に、学年が上がって、考える力がついてくると、作文を書くことは更に苦しい勉強になります。

 夏休みの宿題で、感想文を書く課題が最後まで残ってしまうことが多いのはこのためです。文章を書くというのは、なかなか気軽に始められないのです。

 特に、学年が小5から中2のころにかけては、考える力がついてくるにもかかわらず、その考えに伴う語彙力がまだ不十分なので、書くことがいっそう苦痛になるようです。小4までは楽しい生活作文、中3からは考える小論文ということで、それなりに苦しい勉強ではあっても作文を書くことは軌道に乗りますが、ちょうどその中間の時期がいちばん大変なのです。

 この作文を書く勉強を支えるのも、コミュニケーションです。



 第一は、作文を書く前の取材です。そのテーマに沿った話を自分の身近な家族から聞くことによって、作文の材料が増えます。特に、小学校高学年のころは、課題に合った自分の体験実例が見つけにくい時期です。

 例えば、小学校高学年になると、国語の問題に日本文化の特徴というようなテーマがよく出てきます。子供は、その文章を読んで内容を理解することができますが、その内容の裏づけとなるような経験や知識はまだありません。そういうときに、両親がそのテーマに関連した自身の経験や知識を話してあげると、それが擬似的に自分の経験や知識のように使えるようになるのです。

 この取材の大切さは、小学校低中学年でも同じです。例えば、小学校中学年の身近な課題「がんばったこと」「うれしかったこと」なども、子供が自分の体験で書くだけでは、そこに深みは出てきません。単純に、がんばったことやうれしかったことを書くだけですから、どの子も似たような話になります。しかし、ここで、両親や祖父母に取材をすると、もっと味のある話を聞くことができます。そして、子供にとっては、本で読んだりテレビで見たりしたことよりも、自分の身近な家族から聞いた話の方が、子供自身の擬似的な体験として消化しやすいのです。



 第二は、作文を書いたあとのコミュニケーションです。作文を書くのが好きな子と嫌いな子の差は、書いたあとの評価の差によるものです。子供の書いた文章には、必ずどこかしら欠陥があります。内容がものたりなかったり、誤字があったり、表現が不十分だったりするところがあります。

 作文を書く方は、自分なりに完成したものを書いているつもりですが、それを読んだ大人が、ここもおかしい、あそこもおかしい、と欠点を指摘し始めると、子供はその後書く意欲を持てなくなります。これは、少し想像してみればわかります。例えば、絵が苦手な人に、「さあ、自由にかいてごらん。かいたあとたくさん欠点を教えてあげるから」と言われたら、だれも絵をかく気にはなれないでしょう。歌が苦手な人に、「さあ、自由に歌っていいよ。そのあとどこが下手なのか教えてあげるから」という場合も同じです。そういう欠点を喜ぶのは、ある程度自信がついて、自分が前向きに努力したいと思っているときだけです。しかし、そういう向上心がある人でさえ、欠点ばかりを指摘していると、どんどんできなくなっていくのです。

 作文を書いたあとのコミュニケーションは、書いた内容について楽しく話すことです。書き方について注意するのではなく、書かれた内容について話題にしてあげることが、子供の書く意欲に結びつきます。

 作文を書いたあとのコミュニケーションには、作文の発表会や文集のようなものも含まれます。発表会や文集も、それぞれの作文のよいところを見ることが大事で、他の作品との比較をすることは最小限にとどめておくべきです。



 第三は、作文を書く前の自分自身との対話です。

 「ミラーニューロンの発見」という本によると、だれでも、他人とおしゃべりをする方が、自分ひとりで講演をしたり、他人の講演を聞くことよりもずっと楽にできるそうです。これは、人間の脳に、他人を模倣し共感する仕組みがあるからです。(つづく)



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
国語力読解力(155) 

コメント欄

コメントフォーム
コミュニケーション・ラーニング(その3) 森川林 20101227 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
てとなに (スパム投稿を防ぐために五十音表の「てとなに」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
国語力読解力(155) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 標準新 森川林
 これは、確かに難しいけど、何度も解いていると、だんだん感覚 12/2
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習