ログイン ログアウト 登録
 創造産業のさまざまな形 (日本の新しい産業 その6) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1213番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
創造産業のさまざまな形 (日本の新しい産業 その6) as/1213.html
森川林 2011/03/26 11:06 



 創造産業の広がり方を、流鏑馬を例にとって説明しましたが、では、ほかにはどのような新しい創造産業の文化が考えられるでしょうか。

 まず、流鏑馬に関連して、先に述べた馬の飼育、弓矢の制作などがあるでしょう。このほか、小動物の飼育に関しては、鷹の飼育(鷹匠)、ウズラの飼育、ウソの飼育、金魚の飼育、コイの飼育、猿回しの訓練、イルカの訓練、伝書鳩の訓練などもあるでしょう。江戸時代には、オカメインコやトイプードルなどはいなかったでしょうから、これからそういう新しい種類の小動物についても日本人の手による品種改良や訓練が行われるようになります。カラスは賢い鳥ですが、その鳴き声と色とゴミ箱をあさるという性質から、多くの人に迷惑がられています。しかし、これから長い時間をかけてカラスの品種改良を行い、クジャクのような羽を持ち、カナリヤのような声を持ち、人間の命令に忠実なカラスが作られれば、カラスは一種のペットとして人間と共存することができます。すると、カラス訓練士などというものも、ひとつの創造産業になる可能性があります。

 植物について言えば、日本では、これまで、アサガオ、サツキ、オモト、ランなどにさまざまな品種改良が加えられ、多くの品種が作られてきました。現代の日本は、江戸時代にはなかった世界中の珍しい植物が手に入ります。すると、ここで更に個性的な植物改良が行われる可能性が出てきます。例えば、よい香りのするラフレシア、ゴキブリを専門に食べるウツボカズラ、ペットボトルのかわりになるフルーツなどです。

 これまでの産業構造では、このようなユニークなアイデアは、漫画の話題になるぐらいがせいぜいでした。しかし、これから生まれる創造産業の社会では、作る本人がその内容について強い興味を持ち、その分野の専門の知識や技能をもとに創造的な作品を作り出し、その仕事を同じように面白いと思う人が、その作品や作成技能に関心を持つようになれば、そこにひとつの新しい産業が生まれます。文化というものは、初期の段階では取るに足らないようなものであっても、人間がその身体性を土台に時間をかけて技能に磨きをかけていくと、突然その分野に新しい創造が生まれることがあります。例えば、植芝盛平(うえしばもりへい)が創始した合気道は、単なる武道から質的に異なる超人的な段階にまで到達しました。似た例として、野口晴哉(のぐちはるちか)の整体、肥田春充(ひだはるみち)の強健術など、日本にはさまざまな創造文化が生まれています。

 現代が江戸時代に比べて有利なのは、世界中からの新しい素材や道具が利用できるようになっていることです。工芸品として、木工細工、金細工、うるし塗り、陶芸、染物、織物などがありますが、今後、セラミック、樹脂、新素材などを利用した新しい工芸品が創造される可能性があります。また、コンピュータのプラグラムとセンサーを利用して立体彫刻を短時間で作る技術なども既に実用化されつつあるので、そういう新しい技術を利用した新しい工芸分野が生まれる可能性もあります。しかし、この場合も重要なことは、技術や方法に還元した機械的な生産に向かうのではなく、あくまでも人間の身体性に依拠した個性的な熟練を高めていく方向で、創造産業と向上産業を組み合わせていくことです。

 日本で伝統的に道の文化として挙げられるものに、茶道、華道、書道などがありますが、絵画、漫画、歌、踊り、落語、講談、寸劇、衣料、美容、など、今後さまざまな分野で新たに道の文化が創られる可能性があります。茶道を創始した千利休のように、ひとつの分野に情熱を持って追求する人がいれば、どのようなものもそれ自体が道の文化になることができます。

 創造の分野は、どこにも無限に広がっています。新しい楽器、新しいスポーツ、新しい芸術、新しい行事、新しいお祭り、新しい趣味、新しい文学、新しい舞踊、新しいファッション、新しい名所など、その分野に興味と関心を持つ人が考えれば、いくらでも多様化、細分化、専門化した創造産業を生み出すことができるのです。(つづく)



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
新しい産業(23) 

コメント欄

コメントフォーム
創造産業のさまざまな形 (日本の新しい産業 その6) 森川林 20110326 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
うえおか (スパム投稿を防ぐために五十音表の「うえおか」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
新しい産業(23) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習