子供たちの勉強の意欲をどう育てるかということで、これまで、我慢する力をつけることと、小さな実行から始める方法を書いてきました。今回は、仲間意識を生かすことについてです。
人間は、集団生活をする動物です。だから、仲間に所属したいという気持ちを常に持っています。
勉強の能率を上げるためだけなら、集団で勉強をしても個人で勉強してもあまり変わりはないはずですが、学校のような集団の中で勉強した方がやりやすいと感じられるのは、クラスという集団で勉強が共有されるからです。
子供たちも、高校生以上になると、勉強の能率を考えて、集団の中で勉強するよりもひとりで勉強する方を好む子が増えてきます。しかし、中学2年生のころまでは、友達との競争や協力の中で勉強した方が意欲がわくので勉強の能率も上がるのです。
意欲を高める手段として、競争や賞罰という方法がありますが、これも、その前提に所属する集団があって初めて生きてきます。仲間意識がある中での競争や賞罰であれば、小さなきっかけであっても熱中できるからです。
子供たちが主に所属する集団は、年齢によって変わってきます。一般に、小学校4年生ぐらいまでは、子供たちが最も強く所属している集団は家族で、その主な仲間は父親と母親です。子供たちは、学校のクラスにも所属していますが、この時期は、クラスの友達よりも大人である先生の方が重要な結びつきの関係になっています。
子供たちが小学校5年生以上になると、所属する集団は学校や塾やスポーツチームなどになり、その際の主な仲間は同年代の友達になります。両親や先生という大人よりも、友達との関係の方が強くなるのがこの時期です。この場合の意欲は、友達にどう見られるかということと深く関連しています。塾などで友達との競争に最も燃えるのがこの時期です。
子供たちが中学3年生以上になると、所属する集団は、身近なクラスのようなものから、もっと抽象的なものに移っていきます。それにつれて、友達との競争よりも、自分自身に勝つというような自主独立の勉強の仕方が主流になってきます。したがって、子供が高校生になると、勉強は自分の自覚でやるようになるので、親があれこれ言う必要はなくなります。
問題は、小1-小4のころの意欲づけと、小5-中2のころの意欲づけの方法です。
作文の勉強においては、ここで家族の対話が生きてきます。子供たちが作文の勉強に意欲を持つのは、自分の書く作文が家族という集団の中に位置づけられているときです。
その方法は、事前の対話と事後の対話です。
事前の対話とは、作文の課題の予習です。題名課題の作文の場合は、子供が両親に自分が何を書くつもりかを説明します。感想文課題の場合は、もとになる長文を読んでやはり両親にその長文の内容を説明します。子供が書こうとする内容を両親と共有することで、作文を書くことが家庭という集団に所属して自分の役割を果たすことにつながるのです。
事後の対話とは、返却された作文を見ての対話です。しかし、この事後の対話で大事なことは、勉強的な見直しをしたり推敲をしたりすることではありません(受験コースの場合は推敲が必要ですが)。子供の書いた作文を家族で共有することによって、子供が作文を書くことが家族という集団にとって意味あるものだという感覚を持たせることです。
小学校4年生までは、他人との競争ということを意識せずに、両親が子供の作文に関心を持つことだけで、子供の勉強は意欲的になります。
しかし、小学校5年生以上は、子供の中に友達との競争という意識が強くなってきます。そこで、両親の関わり方は、子供の作文について直接の対話をするだけでなく、同年代の友達への所属感を生かした対話にしていく必要があります。
しかし、この小5から中2の時期に競争という刺激に適応させると、高校生になってからも競争に勝つという目標で勉強をするようになります。競争や勝敗という刺激で行う勉強は、高校生以上ではかえって意欲の低下につながります。だから、小5から中2の勉強は、子供の持っている競争意識を活用しながらも、競争を超えた目的を常に意識させて進めていく必要があります。