ログイン ログアウト 登録
 「中学生からの作文技術(本多勝一)」批判(1) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 14番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2026/5/2
「中学生からの作文技術(本多勝一)」批判(1) as/14.html
森川林 2005/12/05 04:30 
 作文指導に関してテキストとなるような本が少ない中で、この本が中学生の作文指導に使われることもあると思うので、何点か批判を書いておきたいとと思います。

 第一は、読点の打ち方についてです。本多氏は、「長いかかる言葉が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ」と述べています。これはそのとおりです。また、かかる言葉の順序として、「句より節を先に」「長い言葉から先に」と述べています。これもそのとおりです。
 例えば、「村はずれにあるうちの雑木林を開墾する」という文があった場合、「村はずれにある→雑木林」「うちの→雑木林」と、かかる言葉が二つあります。これを、短いほうのかかる言葉を先にして「うちの村はずれにある雑木林を開墾する」と書くと、誤解が生じる可能性があります。だから、本多氏の説明で言うと、「うちの」を強調して先に置きたい場合は「うちの、村はずれにある雑木林を開墾する」とするということです。これも、そのとおりです。
 しかし、ここからが問題で、本多氏は、「村はずれにある、うちの雑木林を開墾する」のテンは不要だから間違いだと主張します。理由は、「村はずれにある」という言葉は終止形と同じなので、マルと誤解されるからだと言うのです。もちろん、その可能性はあります。しかし、かつての国語表記法では、このテンを打つ方が原則だったのです。
 昭和21年3月に文部省教科書局で作成された句読法の案では、「テンは副詞的語句の前後にうつ」「その上で、口調の上から不必要のものを消す」「形容詞的語句が重なる場合にも前項に準じてうつ」としており、その例としてしっかりと「村はづれにある、うちの雑木林を開墾しはじめてから、」という例が載っています。
 句読点が日本語の中に成立したのは、たかだか百年前後のことです。テンの打ち方については、まださまざまな揺れがあるのです。特に読みにくくなければ、いずれも許容範囲です。どれか一方が正解で他方が誤りだというのは、頑なな見方だと私は思います。
 また、終止形と同じ形だと誤解されるとは言うのは、あまり説得力のある理屈ではありません。例えば、私たちが口頭で話す場合、長いかかる言葉が二つ以上あるときは、それが終止形であっても、いったん息を継ぎます。「村はずれにあるうちの雑木林を」というのは一口でも言えますが、「村はずれにあるうちの古い大きな雑木林を」という文になれば、多くの場合、話し手は「村はずれにある」でいったん息を継ぎます。そのときに聞き手は、「村はずれにある」までを聞き、その後それが終止形となるか連体形となるか二つの可能性を予測しながら先の言葉を待っているのです。だれも、「終止形で息継ぎをするなよ」などとつっこみません。(笑)書き言葉は常に話し言葉からの影響を受けています。だから、終止形と同じ形の連体形でテンを打つということも、それなりに自然な打ち方なのです。
 二つの可能性があるものの一方だけを原則とし、他方を反則とする論理は歯切れがよいので、中学生にはわかりやすいかもしれません。しかし、その歯切れのよさは、実は考え方の一面性に基づいている歯切れのよさなのです。

 第二は、本多氏の文章の持つ人間性についてです。本多氏は、悪い文章の見本として朝日新聞の声欄の投稿の一つを挙げ、次のように書いています。
 「一言でいうと、これはヘドの出そうな文章の一例といえましょう」「最初から最後までうんざりさせられるだけの文章だと思うに違いありません」「手垢のついた、いやみったらしい表現」。
 「中学生からの作文技術」の188ページに載っていますから、時間のある人は書店で立ち読みして確認されるといいと思います。当の批判された文章は、ごく普通の文章です。多少紋切り型の表現が多いと思いますが、文章で大事なのは伝えようとしている中身であって、伝え方の巧拙ではありません。書店で確認する時間がない人のために引用すると、こういう文章です。
====
 只野小葉さん。当年五五歳になる家の前のおばさんである。このおばさん、ただのおばさんではない。ひとたびキャラバンシューズをはき、リュックを背負い、頭に登山帽をのせると、どうしてどうしてそんじょそこらの若者は足もとにも及ばない。このいでたちで日光周辺の山はことごとく踏破、尾瀬、白根、奥日光まで征服したというから驚く。
 そして、この只野さんには同好の士が三、四人いるが、いずれも五十歳をはるかに過ぎた古き若者ばかりなのである。マイカーが普及し、とみに足の弱くなった今の若者らにとって学ぶべきところ大である。子どもたちがもう少し手がかからなくなったら弟子入りをして、彼女のように年齢とは逆に若々しい日々を過ごしたいと思っている昨今である。
====
 別にいいじゃん。(笑)そんなひどい言い方で批判するなよ、と私は思います。
 もし、身近な人に、「あいつの言っていることはわかるが、言い方がむかつくんだよな」などという人がいたら、私はその言われた人よりも言っている人の程度の方が低いと思います。
 教育でまず大事なことは、テクニックではなく人間性です。作文の技術を身につけるよりも、作文を書く姿勢の方が大事だと私は思います。私たちは、じょうずな文章を書くよりも前に、よい生き方をするべきなのです。せっかく一生懸命に書いている人の文章に、「ヘドが出そう」だとか「いやみったらしい」などという言葉で批評する感覚は、勉強以前に人間の生きる姿勢として問題なのです。想定されている読み手が中学生であれば、なおさらこのことが言えると思います。

「中学生からの作文技術(本多勝一)」批判(2)



コメント欄

コメントフォーム
「中学生からの作文技術(本多勝一)」批判(1) 森川林 20051205 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
よらりる (スパム投稿を防ぐために五十音表の「よらりる」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
他の教室との違い(22) 作文教育(134) 
コメント1~10件
なぜ公立中高一 森川林
 志望校の過去問に特化した受験対策を進めるためには、まず「春 4/28
記事 5498番
作文検定のプレ あお
お返事ありがとうございます。暗唱検定が早くできてほしいです。 4/9
記事 5493番
作文検定のプレ 森川林
 日本語教育で、簡単なのは会話で、次が読書で、最後が作文です 4/8
記事 5493番
作文検定のプレ あお
日本語作文検定は、日本語を学ぶ外国人のための作文教育にも対応 4/8
記事 5493番
【合格速報】東 ふつ
合格おめでとうございます。 毎週真剣に取り組み、どんどん上 1/7
記事 5403番
国語力、読解力 森川林
読検の解答は個別れんらくでお送りください。 12/29
記事 4331番
国語力、読解力 すみひな
本日の読解検定を受け忘れてしまいました。回答をどちらに送れば 12/27
記事 4331番
森リン大賞が示 森川林
作文力を上達させるコツは、褒めることでも直すことでもなく、書 12/13
記事 5398番
作文コンクール 森川林
 子供たちの教育で大事なのは、知識の詰め込みではなく、読書と 12/10
記事 5395番
読書と作文が子 森川林
 小学生時代は、勉強よりも読書。  中学生以上は、勉強と同 12/9
記事 5394番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 読解検 森川林
 これは、その言葉があるかどうかではなく、文脈として読み取る 4/28
国語読解掲示板
読解検定小5の みきひさ
読解検定 小5 4月について3問教えてください。 どうぞよ 4/27
国語読解掲示板
茨木のり子さん 森川林
 茨木のり子さんが晩年に書いていた言葉、 「倚(よ)りかか 4/27
森川林日記
軽くて意味のな 森川林
軽くて意味のない広告の文面を書いていたのでくたびれた。 嘘 4/27
森川林日記
Re: 例えば 森川林
 この歌の本質は、「言えない」又は「言わない」というところに 4/27
森川林日記
例えば、敷島の 森川林
 本居宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日ににほふ山桜花」は、 4/27
森川林日記
AIに文章を直 森川林
 AIに文章を直してもらうと、  詩的な文章が散文的になる 4/27
森川林日記
雨は龍のメッセ 森川林
 雨は龍のメッセージ。  晴れは太陽のメッセージ。  ど 4/27
森川林日記
五月の薄曇りの 森川林
 五月の薄曇りの空の下をゆっくりと歩く。  自分の心の中に 4/27
森川林日記
走水神社 森川林
 走水神社に行ってきた。  神社の横の山の途中に、弟橘媛( 4/24
森川林日記

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン