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勉強のよくできる子こそ個性を伸ばす教育を as/1905.html
森川林 2013/08/27 08:02 


 小学校低学年や幼児のころから、とてもよくできる子がいます。そういう子を伸ばす方向を、昔ながらの成績を上げることだけに向かわせないことです。
 成績が上がってよくできて、最難関の大学に合格したところで大したことはありません。はるか昔のように、いい大学を出たらそれで安心という時代ではもうないのです。
 もちろん、成績がいいのに越したことはありません。しかし、それもほどほどまでです。
 80パーセントの成績を90パーセントや100パーセントに向かわせる努力をするよりも、その分、その子の個性を伸ばしていくことです。
 なぜなら、これからの時代で大事なことは、自分の個性を梃子(てこ)にして生きていくことだからです。そして、そういう生き方が、本人にとっても楽しいのです。

 成績がいいだけの子はたくさんいます。しかし、そういう性能のいいコンピュータのような人材はもう供給過剰です。
 社会が成熟してくると、性能のよさだけでは売れなくなります。市場は飽和状態で、もうコンピュータは買い換えの需要しかないからです。だから、性能のよさで買ってくれる人を待つのではなく、自分で自分を世の中に売り込みに行かなければなりません。
 そのときに、生きてくるのが個性です。しかし、そういうことを教えてくれる先生はあまりいません。学校や塾は、成績をよくするところであって、個性を伸ばすところではないからです。
 その子の個性に目を向けるのが親の役割です。個性に目を向けられることによって子供は自分らしく成長していくのです。
 そういう時代がもう来ています。

 昔は、いい大学に入るとか、いい資格試験に合格するとかいうことにわくわくする感覚がありました。しかし、そういう成果を手に入れた人が、意外と優雅に楽しそうには生きていません。むしろ、多忙で煩雑な日常に追われていることの方が多いのです。
 かつて邱永漢さんは、「成績のいい子は育てられるが、お金の稼げる子は育てられない」と言っていました。成績は、手順を踏んでそれなりの時間をかければ誰でもすぐに上がります。それも、そんなに小さいころからこつこと積み上げる必要はなく、受験を自覚してからの半年や1年ですぐに上がるのです。
 しかし、すぐ成果が上がるから今の塾は単純な詰め込みに子供を向かわせます。その詰め込みと競争とテストの刺激で煽られた子供は、次第に学ぶことに燃えなくなってきます。好奇心が多くいろいろなことを吸収したい時期に、もう新しいことはやりたくない、今のだけで精一杯、だから手を抜いて表面的にやるしかない、と冷めた勉強姿勢になってしまうのです。
 学校の先生も塾の先生も、勉強の世界しか知りません。親もほとんどは自分の仕事の世界しか知りません。だから、いい成績を取っていい学校に入れば、もっといい世界に行けるという気がするのですが、今の日本でそんな世界はありません。
 成熟した社会では、指定席はほとんどが埋まっています。あとは自由席しかありません。自分で自由な席を作り出す力のもとが個性です。

 しかし、その個性で作る自分らしい人生というのは、それほどあてのない話ではありません。それは、これからの社会が大きなフロンティアを持っているからです。
 日本には、人間がたくさんいて、みんな何かしたいと思っています。その何かとは自分にとってプラスになる何かです。
 ただ消耗するだけの生活ではなく、また平穏無事なだけのルーティンワークの生活でもなく、自分と自分の生活が進歩、発展、成長するちょうな人生を本当は誰もが望んでいます。
 これまでは、そのエネルギーの奔流を阻んでいたものがありました。ひとつはお金、もうひとつはさまざまな規制、そしてもうひとつはこれまでの社会の停滞を生み出してきた既得権です。しかし、これからそういう状況は後退していきます。つまり、これからは制約のない社会になるのです。
 そのときに大事なことは、個人の心からも制約を除いておくことです。大きな欠点のないことだけを目指す小さな人生から、小さな欠点も許容できるぐらいの大きな人生に舵(かじ)を切る時代になっていることを早めに自覚することです。
 世の中は、多くの人が望んだ方向に動いていきます。これからより自由な楽しい社会を来ることを前提にして、子供たちの教育を考えていく必要があると思います。



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