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創造力の源は言語と経験 as/2332.html
森川林 2015/03/14 19:08 


 人間がほかの動物と違うところはたくさんありますが、その中でも特に重要なことは、人間には創造力があるということです。
 言われたことをきちんとこなすだけなら、それが知的なことであっても、これからのロボット技術や人工知能技術の発達によってできるようになるでしょう。
 例えば、今人工知能の技術が視野に入れているのは、医療や法律に関わる仕事を代替することです。これらの仕事は、膨大な知識のデータベースを背景に、不確定な事象や資料に方向性を見つけることですから、機械の得意分野なのです。
 だから、これから人間に求められるものは、治す医学ではなく創造する医学、直す法律ではなく創造する法律になります。

 人工知能が創造力も持つことができるかのように言う人がいますが、それは見かけの創造力であって、本当の創造力ではありません。
 例えば、「悲しい気分」とか「楽しい気分」とかいうテーマで、ランダムにそれらしい曲や詩を作るというのは、今のコンピュータでもできます。しかし、それは創造ではありません。創造の見かけを演出するプログラムなのです。

 では、創造とは何かと言えば、その動機は、生きる意欲です。
 コンピュータは、自動的に温度の調整をすることができます。しかし、それは、コンピュータが、「寒くて嫌だからもっと暖かくしよう」とか、「暑くてたまらないからもっと涼しくしよう」とか思っているわけではありません。ある温度になったらある動作をするというプログラムで動いているだけです(あたりまえの話ですが)。

 ところが、人間は、もちろんそうではありません。だから、人間は、そこから一歩進んで、冬なのに寒中水泳をしたり、夏の暑い盛りに我慢大会などをしたりすることもあるのです。
 生きる意欲は、一つですが、人間を取りまく事象は無限に多様性があります。暑かったり、寒かったり、大雨が降ったり、日照りになったり、また、人間自身も、お腹が痛くなったり、背中がかゆくなったり、鼻水が出たり、くしゃみが止まらなくなったり、無限に多様な状態に遭遇します。
 生きる意欲というたった一つの動機が、それらの多様な事象を、解決されるべき多様な個々の問題として把握するのです。これが創造の出発点です。

 動物や植物にも生きる意欲はあります。しかし、動機があり、問題が把握できても、動植物は自分に与えられた肉体の範囲での解決策しか思いつきません。猫は寒かったらこたつにはいり、犬は暑かったら地面に穴を掘る、という行動しかできません。まして、自ら寒中水泳をしたり、我慢大会をしたりするという予想外の行動を取る犬や猫はいません。

 生きる意欲を阻害する問題を、肉体に制限された枠内で対応するのではなく、新しい手段や方法によって解決しようとするのが人間の創造です。
 その創造の最も大きなツールが、言語です。しかし、その場合の言語は、ある一つの語句がある一つの定義に一致しているというような機械的な言語ではありません。
 人間にとって、ある語句は、その語句を囲む濃淡さまざまなニュアンスに彩られた定義を持って個性的に存在しています。だから、比喩やダジャレや偶然のひらめきが、個人差を伴って生まれてくるのです。

 この言語の多様性の背景となっているものが、読書と対話です。しかし、言語だけを優先させると、空理空論の理屈だけが空回りする言語になってしまいます。
 一方、生きる意欲の背景となっているものは、経験です。しかし、経験だけを優先させると、手当たり次第行動するという動物的な経験になってしまいます。
 だから、これからの子供の教育にとって大事なものは、豊富な経験を伴った豊富な言語なのです。



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