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言葉の森のちょっと未来の話 as/2421.html
森川林 2015/09/18 17:49 


 言葉の森は、昔、作文だけを教える作文教室としてスタートしました。
 「創造性を育てる作文」というのが指導の目標でしたから、当初は国語の勉強などは度外視していました。今でも漢字の書き取りなどには力を入れていません。
 それは、国語とか漢字とか、あるいか算数数学の勉強とか英語の勉強とかいうものは、答えも勉強の仕方もはっきりしているものですから、わざわざ人に教えてもらうようなものでないと考えていたからです。

 しかし、創造性を育てるといっても抽象的で、具体的にどういう勉強が創造性を育てるのかわかりません。
 そこで、いろいろな試行錯誤の結果、今は、音読で語彙力をつける、暗唱で文章を丸ごと理解する力をつける、構成と項目を意識して書く、プレゼン作文で発表と交流の機会を作る、というような方法で指導するようにしています。

 また、作文の評価はどうしても主観的になるので、客観的な評価ができるように、森リンという自動採点ソフトを開発しました。特許庁の検索のページ( https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage )で、「言葉の森」と検索すると表示されます。
 そして、この自動採点ソフトの点数と、小1から高3までの構成・項目指導の評価を組み合わせて作文検定試験を行うようにしました。

 作文の勉強というものは心理的な負担の大きいものなので、なかなか独学で続けることができません。
 だから、夏休みの感想文の宿題なども、締め切りギリギリにならないと書け出せないという子が多いのです。
 そこで、言葉の森では、開設当初から事前指導に力を入れ、作文を書く前に10分間、先生がその子に合わせて説明するという方法で指導するようにしました。

 一般の作文指導はこの逆で、事前に何の指導もないか、あるいは全員一律の指導があるだけで、子供たちに作文を書かせます。そして、書いたあとに赤ペンで詳しく添削します。
 赤ペンの添削がたくさんあると、いろいろ教えられているような気がしますが、その添削を生かせる子はまずいません。
 作文は、事前指導でなければ力がつかないのです。

 言葉の森の作文指導は、書く人の立場に立った系統的なものなので、小1から始めて高3あるいは大学生、社会人になるまで続ける人がよくいます。
 そういう人たちは、書くことが苦にならないのはもちろん、書くこと、読むこと、考えることが好きな、個性のはっきりした人になるようです。

 ところが、このように順調に勉強を続けられない人も一部にいることに、最初のころから気づいていました。
 それは、例えば、読書の習慣がない子、簡単な本しか読まない子、長文の音読をして来ない子、その結果親子の対話もない子、暗唱が続けられない子などです。
 更に、作文や国語だけでなく、算数や数学の勉強でも、通信教材を漠然とやるだけだったり、塾に行っているという理由で家庭学習の習慣がなかったりする子などもいました。
 また、小学生なのに、勉強が忙しくて読書の時間がとれないという逆立ちした勉強の仕方をしている子もいました。

 もちろん、その反対に、中学入試や高校入試や大学入試の受験の直前まで作文の勉強を続け、読書の生活も続け、受験にも合格し、合格後またすぐ作文の勉強を開始するという子もいました。
 この差は、能力の差ではなく、家庭学習や家庭環境の差だと思ったのです。

 しかし、教室では、家庭学習まではコントロールできません。
 「長文ちゃんと読んでくるんだよ。そしてできればお父さんやお母さんに取材してくるんだよ」と前の週に言っているのに、その週になると、「まだ読んでいませんでした」となってしまう子は、やはり密度の濃い勉強はできません。
 それは、やむを得ないことだと思っていました。教室では、家庭での過ごし方まで関与できないからです。

 ところが、インターネットの技術の発達で、クラウドサービスのひとつとして、教室と家庭を結びつける学習指導ができるようになったのです。
 それが、今行っている寺子屋オンエアです。

 生徒は、自宅で自分の好きな時間に勉強を始めます。
 しかし、勉強の仕方を知らない子がほとんどなので、言葉の森の方で国数英の指定の教材を決め、その勉強の方法も決めておきます。もちろん、自分のやりたい教材でやってもかまいません。
 勉強時間は約1時間ですが、低学年の生徒は自由に時間を短くできます。
 予定の勉強が終わると、読書をして先生の電話を待つようにしています。これで、読書習慣のない子でも、毎日本を読む習慣がつきました。

 勉強している間は、先生や同じ時間に勉強している友達が見えるので、自然に勉強する雰囲気で集中して取り組めます。
 勉強が終わると、先生がその日の感想を聞いたり質問をしたり雑談をしたりします。電話だけでなく顔も見えるので、話が弾みやすくなります。
 生徒がその日に音読したものは、録画して先生に送るようにしているので、音読の習慣もつきます。

 こういう形で毎日勉強をしていると、確実に力がつきます。
 勉強は、塾に週何日か通ったり、通信教材をひととおりやったりするよりも、毎日の自学自習を続けることで本当の力がついてくるからです。
 なぜかというと、塾や通信教材の勉強は、わかることもわからないことも同じようにやるので、わかることをやっている時間は無駄になり、逆にわからないことはいつまでもわからないままになることが多いからです。

 小学校低中学年のときは、勉強自体が易しいので、こういう勉強法でも力がつきますが、高学年になると塾や通信教材の勉強ではなかなか力がつきません。力をつけるためには、無駄を承知で勉強の時間を長くするか、自分なりにわからない問題を反復する仕組みを作らなければなりません。しかし、そういう仕組みを作れるような子は、自学自習で勉強できる子なのです。

 寺オンは、この家庭での自学自習になるのです。自学自習を先生がアドバイスする形の勉強なので、家庭学習のいいところと通学教室のいいところを兼ね備えた勉強になります。

 寺オンの応用形態として、作文の勉強と寺オンの勉強を結びつけることもできます。
 作文の勉強で、10分間の事前指導を受け、そのまま寺オン上で作文を書き、作文が終わったら他の勉強や読書をし、勉強が終わったときにまた先生から10分間の話があるという形です。
 その間、生徒は先生とずっとつながっているので、先生もその子がどういう感じで作文を書いているかがわかります。

 また、ネットワーク環境があると、プレゼン作文発表会などの生徒どうしの交流の企画もすぐに行えるようになります。
 夏合宿などのリアルな交流も並行して行えば、ほとんど自宅にいながらにして、勉強も交流もできる充実した教育環境ができます。

 インターネットを利用した教育ですから、この寺オンの勉強を日本国内だけでなく、海外にも広げていくことができます。
 作文指導は、既に海外の生徒を対象にして行っているので、時差の問題さえ解決できれば、寺オンも海外生徒対象に行うことができます。

 海外の場合、最初は海外の日本人の子供が対象ですが、将来は、日本語を勉強したいという外国人も生徒の対象になります。
 すると、そういう海外の生徒を、ホームステイなどで日本に滞在させる形で受け入れる場所も必要になります。
 それが「森の学校」という構想です。
 そこは、もちろん日本国内の生徒も、寺子屋合宿の場所として利用できます。

 以上の作文と寺オンのシステムは、教材を送るのに宅急便を使うような場面以外は、ほとんどすべてインターネットを基盤としているので、どこでも立ち上げることができます。
 例えば、世界中の生徒を、三浦半島の海と山に近い静かな場所に森の学校を作り、そこから教えるということもできるのです。(つづく)



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森川林 2015年9月18日 18時53分  
 「教育が変わらなければならない」と考えている人は多いと思います。
 しかし、何をどう変えるのかというと、それぞれの人が主観的に勉強の内容をどう変えたいかと言っていることが多いのです。
 歴史の勉強をもっと人間的な感動のあるものにしたいとか、国語の教材をもっと明るく前向きなものにしたいとか、道徳の教科に力を入れたいとかいうことは、それぞれに大事なことです。
 しかし、本当に変えなければならないのは、勉強の内容よりも勉強の方法です。
 教えてもらう勉強ではなく、自ら学ぶ勉強にしなければ、教育の根本は変わらないのです。

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