ログイン ログアウト 登録
 教えない勉強によって、子供の成長は途中から加速する Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 3358番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/4
教えない勉強によって、子供の成長は途中から加速する as/3358.html
森川林 2018/07/01 06:13 

 ある、先生どうしの会合の中で、次のような質問がありました。
 「生徒に、算数や数学の分からないところを質問されて、すぐには答えられ答えられない場合、どうしたらよいか」
 このようなことを聞かれて、私はとっさに、
「先生は教えるのが仕事ではないので、子供に自分で考えさせるといい。もし、それでもどうしてもわからない場合は、お母さんに聞くようにするといい」
と言いました。
 すると、ほとんどの先生は、「そんなあ」という感じで笑っていたようです。

 しかし、これは、実はきわめて重要な教育の原則なのです。
 それは、教えないことによって子供が真に成長するからです。

 もし子供にわからないことを聞かれて、すぐその場で教えれば、そのときは理解が早まりその直後の成績はよくなるでしょう。
 しかし、そこで教えられたことは確かにすぐに身につくように見えますが、その定着の仕方は浅いので、すぐに忘れてしまうことが多いのです。
 そしてその代わり、教えてもらうことを繰り返して身につくのは、人に教わって学ぶという勉強姿勢の方なのです。

 教わって学ぶことに慣れた子は、教えを乞う勉強を続けていきます。
 すると、大学入試までは、教えを乞う勉強法で何とかやっていけますが、やがて途中から教えてくれる人はいなくなります。
 すると、そこで成長が止まってしまうのです。

 もし教えられなければ、自分で考えて理解しようとするはずです。
 中学3年生までの義務教育の勉強は、どんなに難しく見える問題であっても、解法を見れば誰でも理解できるようになっています。
 解法がない問題を考えるのは時間の無駄ですが、解法がありさえすれば誰でもわかるようになっているのです。

 確かに、自分で理解しようとする勉強は能率が悪いので、成績はなかなか上がりません。
 しかし、ここで身についているものは、単に成績ではなく、自ら学ぶという姿勢なのです。

 自ら学ぶ姿勢を持った子供は、教える人がいなくなっても自分で学んでいきます。
 だから、途中から勉強が加速し、それまで能率よく教わってきた生徒をやがて追い抜いてしまいます。

 シュタイナー教育の例に見られるように、小学校の低学年のうちはまるで無駄な遠回りをして遊んでいるように見える教育が、途中から自力で学ぶ姿勢によって加速していくのと同じです。

 この自ら学ぶ姿勢は、学校を卒業し社会に出てからも続きます。
 モンテッソーリ教育を受けた子供たちが、社会に出てから創造的な仕事をすると言われるのは、やはり自ら学ぶ姿勢を身につけて成長したからでしょう。

 ただし、もちろん、義務教育の勉強の中にも、子供がいくら考えても分からない問題というのはたまにあります。
 その理由は、解法の説明が、その子にとっては不十分だという場合があるからです。
 そのときはどうしたらよいかというと、それはお母さんが一緒に考えて教えてあげるのです。

 お母さんが教えることも、確かに専門の先生が教えることよりも能率は悪いように見えますが、ここで身につくものは、親が一緒に考えるという家庭の教育文化なのです。
 そして、もしそれでも分からない場合があれば、そのときは能率のために専門の先生に聞くというふうにすればよいのです。
 中学3年生までは、子供の勉強のわからないところは、家庭で親が一緒bに考えるのがよいと思います。

 大事なのは、勉強の内容でありません。
 内容が大事になるのは、学問の先端を行く創造的な勉強をする場合だけです。

 学校教育のレベルでの勉強は、内容はすでにすっかりできあがっています。その具体的な形が、解答付きの問題集です。
 だから、内容を身につけることよりも、その身につけるときの方法や姿勢を身につけることの方がずっと大切なのです。

 元キャノン社長の賀来龍三郎さんは、高校時代の恩師から、数学は公式から自分で考えて解けと教えられました。
 その勉強法は、大学入試では時間切れという結果に終わり役に立ちませんでした。
 しかし、社会に出てからはその姿勢が本当に役立ったと気がついたというのです。

 子供の本当の成長を考えるのであれば、今成績を上げることよりも、将来にわたって続く勉強の姿勢を身につけることを第一に考えていくべきなのです



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
勉強の仕方(119) 家庭学習(92) 

コメント欄

森川林 2018年7月1日 6時29分  
 農業で大事なのは、土だと思われていました。
 土を耕し、肥料をやり、病害虫を防ぐという一連の作業が農業に不可欠だと思われていました。
 しかし今、そうでない農業が次々に生まれています。
 教育も、同じような大きな誤解の上に成り立っているように思えます。
 それは、教育で大事なのはいい先生に教わることだという考えです。
 確かに、いい先生又はいい大人に出会うことは大切です。
 しかし、それは教わることではありません。
 そして、本当にいい先生は、簡単に教えたりはしない先生なのです。
 日本の伝統文化には、「教わるのではなく盗め」という教え方があります。
 教わって身につければ、早く身につくが成長は教えてもらえるところまでで止まってしまうからです。
 盗んで身につけたことは、初めは時間がかかっても、いつまでも成長し続けるからです。


nane 2018年7月1日 6時38分  
 子供の教育を考える場合、大事なことは、とりあえず大学合格がゴールだと思わないことです。
 また、いい就職がゴールだと思わないことです。
 これからの世の中は、これまでの世の中とは違います。
 ゴールは、ごく簡単に言えば、その子が自分の個性を生かしてその分野で第一人者となることです。


森川林 2018年7月1日 15時20分  
 算数数学に関しては、入試に出てくる問題は一種のクイズと同じなので、解法を教えてもらえればすぐにわかりますが、解法を知らない状態で解こうとすると、その場では非常に時間がかかるという性質があります。
 だから、算数や数学の問題は、解法がない状態では、算数数学を日常的に教えている人でなければすぐには答えることはできないと考えておくとよいのです。
 しかし、解法があれば、普通の大人が少し考えればすぐに教えることができます。


nane 2018年7月1日 15時29分  
 「憤せざれば啓せず」という言葉があります。
 自ら発奮して学ぼうという気持ちのないうちは、教えても素通りしていくだけです。
 しかし、そういう子ほど、すぐに聞きたがります。
 だから、先生の仕事は、教えることではなくその子にやるぞという気持ちを起こさせることです。
 しかし、相手は人間なので、賞や罰でやる気を起こさせることはできません。
 それは、人間を動物のレベルに落としてやる気を起こさせることなので、長い目で見ればその子はかえって成長しなくなるからです。


かほ 2018年7月2日 20時42分  
私の子供(小5)はそもそも考えません。算数でも「答えを教えてくれ」と言ってきます。答えを教えないとそこから一歩も進みません。

森川林 2018年7月3日 9時47分  
 かほさん、こんにちは。
 それは、子供の問題ではありません。
 もっと大きな勉強のさせ方の問題なのです。

コメントフォーム
教えない勉強によって、子供の成長は途中から加速する 森川林 20180701 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
あいうえ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「あいうえ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
勉強の仕方(119) 家庭学習(92) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 標準新 森川林
 これは、確かに難しいけど、何度も解いていると、だんだん感覚 12/2
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習