小学1、2年生は、勉強に取り組む姿勢の基礎ができる時期です。
この時期の勉強は、内容的には難しいことは何もありませんから、勉強の内容や時間ではなく(むしろ時間は少ない方がいい)、勉強に取り組むスタイルを作っていく時期です。
では、よい勉強のスタイルは何かと言うと、毎日同じことを、同じように、子供自身の意思で始めて終わりにすることです。
この反対が、ときどき違う新しいことを、量が多かったり少なかったりしながら、親に言われてやることです。
その他人依存型の勉強の典型が、学校の宿題と、親が思いつきで与える問題集です。
と書くと、いろいろ語弊がありそうですが、これは本当です。
問題集を解く勉強や、宿題をやる勉強は、子供がこのように言う可能性があります。
「問題集はもう全部終わったからやることがない」
「宿題がないから今日はやることがない」
つまり、自分の意思で勉強するのではなく、他人の提供するものに依存して勉強することになるのです。
そこで、新しい問題や宿題を出そうとすれば、それは別の形の問題や宿題になります。
勉強で最も大事なのは、同じことを繰り返しやることです。
確かに、いろいろな新しいものが出てくると、本人は変化があって面白いと思うかもしれません。
しかし、それでは実力はつかないのです。
ですから、家庭での学習は、時々変わる外から与えられたものに依存するのではなく、家庭で決めたいつでもどこでもできるものにしていく必要があります。
そして、その勉強は、親が特別に見なければできないものではなく、子供に任せる形で最低でも1年間続けられるものでなければなりません。
市販の問題集を利用する場合でも、その勉強が少なくとも1年間続けられるものであるかどうかを考える必要があります。
勉強は、同じことを同じように継続することで力がつきます。
たとえ平凡な勉強であっても、1年間通して毎日できるものであれば確実に力がつくのです。
では、そういう勉強は何かと言うと、第一は家庭で決めた音読です。
音読は、最近学校の宿題として出されることが多くなりましたが、宿題をあてにした勉強は他人に依存した勉強になります。
家庭で決めた音読を基本にして、宿題は補助的なものとしてやっていくことです。
これを両立させる方法は、朝ご飯の前の確実に時間がとれるときに家庭で決めた音読、夕方の勉強時間にできる範囲で宿題の音読というようにするのです。
この音読と並んで行えるのが、第二の暗唱です。
音読は、それが何かの成果として出るのはずっとあとになりますから、子供にとっては達成感がありません。
しかし、暗唱はやればすぐに成果が出ます。
その日の最初にできなかったことが、わずか10分の練習で最後にはできるようになるという実感があるからです。
しかし、この暗唱は、お母さんも実際にやってみて、その感覚をつかんでおく必要があります。
親に経験がないと、見当違いのアドバイスや注意をして、子供の意欲をそぐことがあるからです。
家庭で取り組む勉強の第三は、読書です。
読書は毎日欠かさずにやる必要があります。
ただし、ほかにすることがあるときは、読書はいちばん最後に行うことです。
読書は、読み始めると止まらなくなる性質があるので、最初にやると、そのあとの予定が進まなくなるからです。
この音読、暗唱、読書ができれば、国語力の基礎はできます。
次は、第四の算数です。
昔は、算数でわからないところがあると、学校でわかるまで教えるということがありましたが、今は本人任せになることが多くなっています。
子供は、意外に予想外のところでつまずくことがあります。
そのつまずきを早めに察知して、算数が普通にできるようにする、少なくとも苦手意識を持たせないようにするための勉強が、市販の問題集1册を完璧にやりとげることです。
そのためには、できた問題は二度とやらなくていい、できなかった問題だけ日をおいて繰り返すという勉強の仕方が大事です。
小学校低学年のうちは、できた問題を繰り返しやってもそれほど時間の負担はありませんが、この勉強姿勢のまま高学年、中学生、高校生になると、学習の能率が極端に悪くなります。
そして、こういう能率の悪い勉強をする生徒ほど、できなかった問題を繰り返すという勉強をしないのです。
1冊の問題集を繰り返しやるためには、ばらばらのプリントではなく、製本された1冊のものである必要があります。
ばらばらのプリントであっても、それをファイリングして繰り返せる仕組みになっているところはいいのですが、それでも学年が上がるとファイリングシステムを維持するのはかなり大変になります。
また、最近はタブレットを使った問題集なども出てきています。
勉強の結果をデジタル化するというのは、勉強の管理という面ではとても大事なことですが、勉強そのものをデジタル化するのは、かえって学力を低下させます。
なぜなら、人間は、ある問題が自分のやった問題集のどの辺にあったかということをアナログ的に覚えているからです。
このアナログ的な感覚が、勉強を定着させる助けになります。
だから、勉強はあくまでも紙ベースで行い、その結果だけをデジタル化するという工夫が必要です。
また、算数は、親がわざわざ教えなければ子供が理解できないような難しいものをやる必要はありません。
小学校低学年の難しい算数の問題集は、算数の本質的な難しさではなく、問題文の文章が読み取りにくいだけの難しさであることがほとんどですから、算数の力がつくよりも、勉強が嫌いになる効果しかありません。
家庭学習で第五に大事なことは、親がいつもにこやかで、子供が楽しく過ごしていることです。
ある意味で、この子供の幸福感が学力を育てる最も重要な条件になります。
これは、いろいろな外的条件があるとしても、基本は親の決心次第ですから、ときどき子供の立場に立って、子供が幸福に暮らしているかどうかを見直す必要があります。