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言葉の森は、なぜまだプログラミング講座を始めないのか as/3637.html
森川林 2019/03/20 03:37 

 プログラミングの学習には、3つ条件が必要です。
 遊びとして取り組めるものであること、初心者でも完成の喜びを味わえること、しかし更に高度なプログラミングに進めることです。

 昔はその入口のひとつがhtmlでした。
 かつては、慶應義塾大学のSFCで、大学生がhtmlを作る授業をしているということが話題になった時代もありました。
 そこから、さまざまなプログラミングに進んだ人も多かったと思います。

 しかし、今のhtmlは、cssなどで複雑な組み合わせができるようになり、見た目を重視した専門化したものになってきています。
 子供がプログラミングを学ぶにはあまり適した教材とは言えません。

 子供にとっては、遊び的な要素がもっと必要で、その分野は男の子であれば、ドローン、ミニカー、ロボットなど動かすことができて、友達とゲームとして遊べるものです。

 実際にモノを動かして遊ぶことにより、何が学べるかというと、その遊びの中でプログラミングが便利なものだということを実感できるようになるのです。
 そうすれば、成長してからも、「こういうものがあればいいんだがなあ」というときに、「まだ誰も作っていないようだから、自分で作るか」という発想ができるようになるのです。
 これがプログラミングリテラシーです。

 現代の社会では、人に頼めばやってもらえるというサービスが豊富です。
 しかし、人間はひととおりのことは自分でやれるようにしておくことによって、自立した生き方ができるようになります。
 自分でやる時間がないから人に頼むというのはありますが、自分でやる能力がないから人に頼むというのでは、同じ頼むでも全く違います。

 プログラミングが自分でもできるという感覚をつかむために、子供時代に、遊びとしてのプログラミングを学ぶ意義があるのです。
 しかし、今のプログラミング学習の多くは、遊びだけで終わってしまう可能性があります。
 お絵かきや、レゴの組み立てと動きを、パソコンを使ってやる程度でそこから先に進まないような気がするのです。
 かと言って、本格的に言語を学ぶところに行こうとすると、大多数の子は面白さを味わう前に興味を失ってしまうように思います。
 それを克服する要となるのが、遊びとして熱中できるような面白さのある教材ですが、それがまだどこでも模索中なのです。

 たぶん、将来は、動力とセンサーを組み合わせたさまざまなロボットで子供たちが遊ぶ時代が来ると思います。
 自分のロボットをペットとして作り、子供によってはそのペットのロボットを犬にしたり、猫にしたり、恐竜にしたり、妖精にしたりとさまざまに工夫し友達と交流する形で遊ぶことができるようになります。
 そういう教材と組み合わせたプログラミング学習ができれば、プログラミング教育はもっと楽しくかつ高度にできるようになります。
 言葉の森が、まだプログラミング講座を開かないのは、今はそういう教材ができる少し手前の時期のように思うからです。

 しかし、プログラミングは、一つの技能です。
 その技能よりももうひと回り大きい学習の意義は、理数的素養というようなものです。
 理数的素養とは、理科実験や数学の演習を通して、世の中には自分の直感を超えた客観的な論理の世界があるということに対する確信です。
 その確信がもとになって、人間は新しい発明や発見に、つまり創造に取り組むことができるからです。

 ふりかえると、江戸時代の人たちは、たぶん現代の日本人の平均よりも理数的素養があったと思います。
 だから、種子島に鉄砲がもたらされたとき、西洋の科学技術を多くの未開民族が魔術のように受け止めたのに対して、当時の日本人は、同じ人間が作ったものであれば、自分たちにも作れないわけがないという発想を持つことができたのです。
 江戸時代になぜ理数的素養があったかというと、それは四書五経の音読と算盤による基礎教育の上に、すべての人が農業や工業やあるいは商業の分野で自分の力で働くという社会の仕組みがあったからだと思います。

 途中、話がやや脱線しましたが、私は、今の段階でプログラミング学習に子供時代から取り組ませるよりも、言葉の森の発表学習クラスで、自由な理科実験や発表などを行う方が、ずっと理数的素養がつき、学問の面白さを感じるようになるだろうと思います。



コメント欄

森川林 2019年3月20日 4時4分  
 日本でIT教育が進まなかった最も大きい理由は、日本語の文字コードが混乱していたからだと思います。
 それが、子供たちがプログラミングを遊びに使う際の大きなブレーキになり、日本のIT教育が遅れたのです。
 今はその環境は大きく改善されていますが、まだ子供たちが熱中して遊べるような教材がありません。
 お絵かきをして絵を動かしたり、レゴでロボットを作ってそのロボットを動かしたりするのは、導入部分の学習としては楽しいと思いますが、その先に自分で工夫して高度なところまで進んでいくという道筋がないように思います。
 だから、プログラミング教育として先まで進める学習を始めるのは、中学生ぐらいからでよくて、小学生のときは、学年ごとに楽しめる理科実験のようなものに取り組んでいくのがいいと思っています。


nane 2019年3月20日 4時23分  
 私がプログラミング教育でイメージしているのは、昔の子供たちが、メンコやベーゴマに熱中して遊び、自分なりにいろいろな工夫をして遊んだように、初めての子でも楽しめるが、工夫しようとすればいろいろなことができるという遊びと学習の両方の要素がある教育です。
 たぶん近い将来、そういうロボットプログラミングの教材が出てくると思います。
 今もすでにあるのかもしれませんが、今はまだ遊びの要素の方が中心で、しかも大がかりのものが多いような気がします。


あお 2019年3月20日 8時52分  
そういう意味では、マイクラのコマンドはいいと思います。楽しみながら学べる。マイクラの本質って家事だと私は思っていて、家電が進化したように(ちょっと違うけど)、コマンドを使ってマイクラの世界を発展させることができる。マイクラはマイクロソフトが教育用に買収したんですよね、たしか。プログラミングの入り口としてすごく優れていると思います。私のまわりの子たちもやってます。Wifiで子どもたちがゲームの中に集合し、コマンドを書ける子が世界の一部を書き換えていくのを「おー、すごいなー」と見ていたりして、おもしろそう。手で一個一個ブロックを積んで作る壁を、コマンドで手品のようにぱっと作ったりして。

森川林 2019年3月20日 19時45分  
 あおさん、ありがとうございます。
 マイクラというのがあるんですね。今度自分でやってみようと思います。
 この分野はすごく重要なので、どこかがいい教材を出すと思っていましたが、マイクロソフトなんですね。

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