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作文に関するいろいろな図書 as/470.html
森川林 2009/04/29 10:35 
 以前、作文に関する図書を紹介したことがあります。(2008年12月28日の記事)
 今回は、ここの図書について、その内容を紹介したいと思います。(紹介は順不同)

「最強作文術」(直井明子著)

 理論的によく整理されている本です。書く前の材料集めと、材料集めのための対話を重視している点が特徴です。
 教材の中心になっているスターシートは、子供向けのマインドマップ、あるいは、枠組みつきのマインドマップと考えていいと思います。
 子供向けのマインドマップという点で、親子の対話のきっかけを作りやすいと思います。一般の作文指導などでよく行われる構成メモよりも書きやすい形式になっています。
 課題に対応したスターシートが用意されているので、誰でも手順に沿って教えられるという形になっています。そのかわり、新しい課題に対応するためには、新しいシートを用意しなければならないところが、準備に時間のかかるところです。また、小学校高学年まではこの形で指導できても、中学生や高校生の指導はまた形を変える必要があるのではないかと感じました。
 枠組み付きマインドマップという点では、構成があらかじめ指示されているので、誰でもすぐに書き出すことができるという点が利点です。しかし、これはこのほかのすべての教材について言えることですが、教材をあまり準備してしまうと、その教材がないと勉強が始められないということになる可能性があります。
 また、構成を指示する方法は、作文を書きやすくする方法にはなりますが、思考の内容を深めるためには逆に枠組みがない方がいいのではないかと思いました。

「親子で遊びながら作文力がつく本」(松永暢史著)

 この本のポイントは、(1)片っ端からメモを取る、(2)先生や親が褒めて引き出す、の二つです。シンプルですが、作文の指導でいちばん大事なことが書かれています。
 著者は読書感想文という宿題について批判をしています。確かに夏休みなどに行われている読書感想文の宿題は、教育的意義があまりなく、かえって作文嫌いの子供を作っている面があります。しかし、著者の書いている読書感想文対策は、やや乱暴で、感想文の宿題はその本の解説を抜粋して仕上げてしまえとなっています(笑)。忙しい人には、これも一つのやり方になると思います。言葉の森でも、小学校低学年の感想文は子供に苦労して書かせるよりもお母さんが全面的に手伝ってあげるように話しています。しかし小学校5年生以上の感想文は、指導の仕方によっては教育的な意義のあるものが書けるので、学年によって対応を変えていくといいのではないかと思いました。

「ちびまる子ちゃんの作文教室」(貝田桃子著)

 これは、楽しく読める本です。ちびまる子ちゃんの漫画が理解を助ける形で、わかりやすく書かれています。子供がこの本を自分でどんどん読んでいき、作文や国語の参考書代わりに使えるような形になっています。作文の書き方だけでなく、手紙の書き方、俳句の書き方、新聞の書き方、感想文の書き方、敬語の使い方など、文章を書くことに関する国語の知識が幅広く説明されています。内容はバランスよく密度も濃いので、子供向けの国語作文の知識に関する良書と言ってもいいと思います。

「樋口裕一のカンペキ作文塾」(樋口裕一著)

 これは、新聞社から出されている本で、新聞の記事を参考に意見文を書いていく練習になっています。時事問題で出された課題を自分なりに考えるという設定で書く練習しています。
 小学校高学年ぐらいで、社会問題に関心のある子にとっては、面白く読み進められる本です。文章の書き方は、あらかじめ型を作って進めるというところに力点が置かれています。意見文は、一般的な課題の「漫画を読むのはよいか悪いか」のようなものでも書けますが、このように新聞記事を話題にすると、親子の対話が盛り上がるということがあります。学校などである話題を決めて考えさせ、家に帰って両親と話し合いをさせてから意見文を書かせるというような使い方もできると思いました。

「松永式作文練習ノート」(松永暢史著)

 「親子で遊びながら作文力がつく本」本よりも5年ぐらいあとに出た本なので、内容がより洗練されています。中学入試で選択問題よりも記述問題が増えたということに対応して、作文を書く意義を論じています。
 片っ端からメモして書くという書き方が、説明だけでなく実際のサンプルとして載っているので、メモのメージがつかみやすくなっています。また、自由なメモだけでなく枠組みを決めて書くようなスタイルのメモも載っています。このやり方は、学校などで一斉に大量の生徒に作文を教える場合には有効だと思います。しかし、一人ひとりの子供に対してこういう準備をするのは教材作りが大変だということと、こういう準備をすることで逆に子供は他人からメモの準備をしてもらうことが当然だと思うような問題も出てくるのではないかと思いました。しかし、導入部分の指導としては、この枠組みを決めたメモ指導は効果があると思います。

「書く力をつける」(樋口裕一著)

 小学校低学年向けの本なので、作文の本というよりも、言葉の使い方に対する問題集のような内容になっています。問題集と割り切って順番にやっていくと、国語の勉強になると思います。

「宮川式10分作文プリント」(宮川俊彦著)

 この本は、文章を書くスペースが非常に多いので、勉強の密度は高くなると思いますが、その前に、子供が飽きる可能性もあると思いました。その理由は、書くスペースが多いのですが、そこで書いたものをどういうふうに評価するのかということがわからないからです。もちろんそれでも飽きずに続けられる子はいいと思いますが、書いたあとに、勉強が済んだという実感がわきにくいのではないかと思いました。しかし、書くスペースが多いという点は、高く評価できると思います。

「小学校の作文を26のスキルで完全克服」(向山洋一編・師尾喜代子著)

 この本は、小学校で習う国語の勉強に関する知識がバランスよく書かれています。また、文章の種類も、調査報告文、行事作文、観察文など、幅広く取り上げています。比喩、体言止め、倒置法などの技術についても書かれています。ただ、表現上のさまざまな技法は、実際の作文を書く際に役立つというよりも、国語の知識として知っておくだけで十分だという感じがしました。家庭で使う教材としてはあまり向かないと思いますが、小学校や学習塾で、国語学習の教材として使っていく分には、とてもいい教材になっていると思いました。

「陰山式脳トレ聴写」(陰山英男著)

 CDで聴く言葉や文章を、手で書き写すというスタイルの勉強です。こういう単純なスタイルの勉強は、繰り返すことが習慣になるので、長続きする勉強になると思います。また、聞いたことを書き写すというのは、目標がはっきりしている勉強なので、漠然と作文を書かせる勉強よりも子供にとっては達成感があります。また、このやり方なら評価の問題も出てきません。問題は、聴写だけでは飽きるということと、聴写のためのCDが用意されていないと自分の力で勉強できないという点です。CDが終わったあと、親がテープに録音する方法などを考えておくといいと思いました。

「あなうめ作文」(陰山英男著)

 文章のところどころに空欄つまり穴があり、そこに言葉を入れても完成させるというスタイルの勉強です。穴埋めの穴が小さい場合は、簡単すぎる感じがします。例えば、「太陽の光が、□□□□まぶしい」で、答えは「ぎらぎら」という具合です。ところが、先に進むと次第に穴が大きくなり、最後は全部が穴のようなもので(笑)、日記を書く形になっています。穴が少ないときは簡単すぎ、穴が多くなると難しすぎる感じがしました。ちょうどいいくらいの穴うめの工夫がされるといい教材になるのではないかと思いました

「百ます書き取り」(陰山英男著)

 聴いたとおりに書く、又は、見たとおりに書き写すという練習です。分量は100字や200字なので、低中学年の毎日の勉強としてはちょうどいい長さです。こういう単純な勉強ほど、実は毎日続けるものとしては役に立つのです。しかしこれも、聴いて書くときは、教材のCDが用意されていないとできないという問題があります。また、書き写し自体はいいのですが、同じ文章何度も書いてその文章を覚えるところまで繰り返さないと本当の力がつかないと思います。ところが、筆写というのは時間かかるので、同じものを何度も書き写すということはまずできません。そういう点で、元の文章を暗唱で覚えてから書き写すというような工夫がなされれば、さらにいい教材になるのではないかと思いました。

「マインドマップが本当に使いこなせる本」(アスキー)

 マインドマップについての解説です。作文の本ではありませんが、マインドマップを作文指導に使った九段小学校の例が出ています。マインドマップを利用して作文が書きやすくなったという話です。確かにマインドマップで単語と線とイメージで自分の考えを書いていくと、作文に書く材料が豊富に出てくるので、書くのに困らないという面があります。その点で作文の導入にマインドマップを使うのは有効な方法だと思います。
 ただ、このマインドマップというアメリカで開発された方法をそのまま使うと、かなり時間がかかります。大きい紙で、カラーで色分けし、線を太くし、絵をかくという作業は楽しいものですが、作文の導入に毎回このような作業をするのは時間のかかりすぎると思います。また、日本語は、短い漢字かな混じり文で的確に物事をあらわすことができるので、英語のように単語を並べるより短文で書いていくような使い方の方が発想が広がりやすいように感じました。



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