ジャーマンダー セージ
●動画:https://www.youtube.com/watch?v=MDdTFAalCKw
野口悠紀雄さんの「
『超』創造法 生成AIで知的活動はどう変わる?」という本を読みました。
この中で、野口さんは、キーワード文章法という文章の書き方を説明しています。
これは、キーワードをいくつか書き、とりあえずそのキーワードをもとにChatGPTに文章を作ってもらい、そのあと、それを参考にして自分で文章を書くというような方法です。
(詳しくは、本書の112ページをごらんください。)
私が、この話を読んで、最初に感じたのは、「野口さんのような文章を書くプロでも、最初のきっかけを作るのが大変なのだなあ」ということでした。
野口さんは、このきっかけ作りが難しいという理由を「慣性の法則」と呼んでいます。
作文を書くというのは、実は、最初の書き出しを始めるところがいちばんエネルギーを必要とするところです。
書き始めれば、次々に文章が続いていきますが、最初の書き出しのところで、慣性の法則を破るだけの力が必要になるのです。
(高校の物理で学びますが、静止摩擦力は運動摩擦力よりも一般に大きいということです。)
作文クラスの場合は、みんなが一斉に書き出すので、この慣性の法則を打ち破りやすいところがあります。
通信教育で、自宅で自分ひとりで勉強する場合は、この最初のきっかけがなかなか作れません。
慣性の法則は、家庭学習にもあてはまります。
勉強は、他人に教えてもらうよりも、自分ひとりでやる方がずっと能率がいいのですが、自宅で自分ひとりでやるときの最初のきっかけ作りが難しいのです。
そこで、受験生などは、よく図書館に行って、そこで勉強を始めるということをします。
予備校の自習室に行って勉強するということもあります。
「勉強を始める」ということには大きなエネルギーが必要としますが、「行く」ということには、エネルギーを必要としません。
「行く」がきっかけになり、いざ図書館や自習室に着いてみると、その流れで「勉強する」も無理なく始められるのです。
言葉の森では、このきっかけ作りのために、昔、自習室を作りました。
現在、1日に2、3人が自習室を利用していますが、参加者が多い方がきっかけ作りには役立ちます。
自習室に入るには、「何時から、何を始めて何時までやる」という記録のページがあります。
この記録が蓄積できると、自分の勉強の経過が残ります。
経過が残るということ自体が、勉強を続けるきっかけになります。
冬休みは、自由時間が多いので、つい惰性的に過ごしがちです。
自習室は、朝から晩まで、土日も含めていつでも開いています。
学校に行くときと同じように、朝起きて8時になったら自習室に入って勉強するという流れができれば、勉強のきっかけをつかみやすくなります。
自習の記録を続ければ、自分がどれだけやったかということが残るので、それも励みになります。
この自習室を活用するために、今後、問題集のページが進んでいない生徒や、読書が進んでいない生徒には、自習室の参加を義務づけるようにしたいと思っています。
ただし、ここで保護者に注意しておきたいことは、子供はすぐに勉強を始めるわけではないということです。
言葉の森の通学教室時代、教室に来た中学生や高校生は、最初はパソコンに入っているゲームをひとしきりして、それから作文を書き始めました。
みんな、よくできる子たちです。
人間は、機械のように、ボタンを押せばすぐにスイッチオンになるというものではありません。
時々息抜きをしたり、寄り道をしたりしながら、少しずつ本道を進んでいきます。
そういうおおらかな気持ちで、子供の勉強の様子を見ておくといいと思います。