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プログラミングの学習も、数学の学習も、どの教科の学習も、やがて山頂型学習になる――AI時代の教育は大きく変わる as/5189.html
森川林 2024/10/08 17:41 


 プログラミングの学習は、役に立ちます。

 特に、自分で新しく何かを始めようとする人にとっては、ある程度のプログラミングの知識技能は必要です。

 それは、自分で何かを始めようとする人にとって、車を運転できることがある程度必要であるのと似ています。

 ところが、プログラミング学習の難しいところは、積み重ね型の学習であるために、最初のころの知識の習得に時間がかかることです。
 見晴らしのいい尾根に上がるまでの間に、歩かなければならない単調なアプローチの距離がかなり長いのです。

 その対応策として、プログラミング学習の導入部分を、興味の持てるゲーム作りにしたり、ロボット作りにしたりという工夫が数多く生まれました。

 しかし、ビジュアルプログラミングで、自分なりのプログラミングを作れるようになった子も、その後、コードプログラミングに移行する段になると、その単調さに飽きてしまうことが多かったのです。

 ところが、この積み重ね型のプログラミング学習が、大きく変わる可能性が出てきました。
 それが、AIの活用です。


 プログラミングの学習と似た事情は、数学の学習についても言えます。
 子供がある時期に数学が苦手になると、それを得意教科にするまでがんばるということは、なかなかできなくなります。

 それは、数学が、典型的な積み重ね型の学習だからです。
 苦手になったときに、どこから手をつけていいかわからなくなるのです。

 積み重ねが必要だということは、多かれ少なかれ、どの教科の勉強にもあてはまります。

 しかし、それらが、AIの利用によって変わる可能性が出てきたのです。


 積み重ね型の学習に対して、正反対の学習を山頂型の学習と呼びたいと思います。

 スキーの練習のごく初期のころは、麓から山頂まで歩いて登る過程が必要でした。
 今は、リフトで山頂まで行けますが、リフトのない山には行くことができません。

 ところが、ヘリコプターで山頂まで行くという方法もあるのです。
 スタートが山頂で、そこからゆっくり麓まで降りていくというスキーの仕方です。


 プログラミングの学習における山頂とは、「こういうものを作りたい」というイメージです。
 数学の学習における山頂とは、「この問題を解きたい」という目標です。

 積み重ね型の発想をしているかぎり、そのイメージや目標を実現するためには、長い下積みの苦労をしなければならないというのがこれまでの考え方でした。

 しかし、AIを利用すれば、すぐに自分の望むプログラミングを作ってもらえます。
 数学でも、すぐに解き方を教えてくれます。

 そのあと、そのプログラミングの詳しい意味を聞いたり、数学の解き方の更に詳しい説明を聞いたりしていけばいいのです。

 聞くことにも、もちろん時間はかかります。
 しかし、下から登っていく苦労に比べたら、上から下へ降りる苦労は、比較にならないぐらい小さなものです。

 下から登るためには、麓を全部回る必要がありました。
 上から降りるには、必要なところだけ下っていけばいいのです。

 これが、山頂型学習の特徴です。


 AIの利用によって、これからの勉強の仕方は大きく変わります。

 AIは、答えを教えてくれるだけではありません。
 もし、自分の苦手な問題があれば、それと似た問題を何問も作ってもらうこともできます。

 英語の場合は、音声のやりとりもできるので、ヒアリングとスピーキングの勉強も同時にできます。
 AIと英会話で話をしたあと、自分の言った英文のどこを直したらいいかを聞けば、丁寧に教えてくれます。
 人間では、なかなかここまではできません。


 AIは、勉強のすべての分野をカバーしている、自分だけの超一流の家庭教師です。

 山頂学習ということで言えば、登りたい山の頂上にすぐに連れていってくれる空飛ぶ乗り物と言ってもいいでしょう。


 では、実際に、プログラミング学習がどういうかたちになるかというと、まず、生徒は、自分の作りたいものをChatGPTに作ってもらいます。

 すると、Pythonのプログラミングコードがわかります。
 勉強好きな子なら、そのコードを読むために、AIに更に質問をするか、又は、Pythonの勉強を始めるでしょう。

 この下り坂の勉強の仕方は、自分のしたかったことと結びついています。
 ゲーム作りやロボット作りから、コードプログラミングに移り、長い登り坂を経て尾根に上がる勉強よりもずっと楽にできます。

 しかし、そういうプログラミングの勉強をわざわざ始めなくても問題はありません。

 こういう命令をしたら、こういうものができたから、次は、どういう命令をしてみようかと考えるようになればいいのです。

 ちょうど、Midjourneyなどの画像作成ソフトの使い方と同じです。
 言葉による入力と、画像による出力との間のブラックボックスがどうなっているかは誰にもわかりません。
 作った人自身がわからないのが、深層学習の特徴です。

 だから、わかることよりも、使えることが大事になるのです。


 AIの活用に伴って、勉強のスタイルも変わってきます。
 これまでは、答えのある知識を吸収することと中心に勉強が組み立てられてきました。
 そのわかりやすい表現が、テストや宿題や点数や成績でした。

 これからの勉強は、吸収するだけの勉強ではありません。
 これからの勉強は、創造し発表することが中心の勉強になるのです。


 言葉の森が今考えているのは、データベースとChatGPTを組み合わせ、山頂型学習で学力を身につけ、創造発表教育で、勉強の方向を吸収から創造と発表へと発展させる教育です。

 これから、新しい勉強法を作っていきたいと思います。



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