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4月の森リン大賞(中3-社) as/911.html
森川林 2010/05/22 09:47 

 4月の清書をもとにした学年別の森リンベスト10です。

 中高生や社会人のみなさんは、難しい課題が多くなりますが、よく考えて書いています。




※ 1位の作品はよく書けていますが、段落が少ないので、やや読みにくくなっています。読みやすい段落の平均字数は150字ぐらいと言われています。次回の清書は、段落を工夫して書いてみてください。

4月の森リン大賞(中3の部67人中)

踊りたまえ大地の子らよ
おむふ

 人はいずれ“歩く”ことを忘れるかもしれない。 古来の生物でヒラコテリウムというものがいた。多くの人が知らないであろう。うさぎほどの大きさのさえない哺乳類である。まだ豊麗であった原始の森に住まうさすらい人であった。今から5400万年の太古、人類の祖先が樹木から離れ生活するはるか以前のことだ。さすらうヒラコテリウムはやがて森を離れ草原へと赴いた。その地で外敵に追われながら生きるうちに彼らの一族はしかるべき体へと進化を遂げてゆく。長き距離を走り自分を狙う呪わしい外敵から逃れることができるだけの体。パラヒップスの登場である。そして彼らは大地と菜の甘美なる力によりついに進化の果てに、そう馬となったのだ。ここまではよかった。生物が自然と共に華やいだ世界を謳歌していたこのときは・・・。だが、優雅に彩られたこの世はこれまでにみない寸鉄のごとき生物に淘汰されていった。人類である。彼らは自分の足で歩かぬ術を知る種族である。自然の中で栄えたあの“馬”をはじめとしてその延長線上にある馬車、そして1769年フランスのキュニョーが三輪蒸気自動車を製造してからというもの人はますます自分の足を使わずに生きてゆくことを憶えていった。今日ではかつての石炭は電気にかわり、危うき航海を経てたどり着いていた他国へと飛行機により行けるようになった。このように航空力学、海洋学、地学、化学と科学文明は大地は当然、今では巡航探査で深海底へ行き、ボイジャー一号などは太陽系外へ向かう時代であるから世界を淘汰する勢いを持っている。しかしこの科学文明と人類の進化は私には少し異常に思われる。今までの生物の発展とは先述した馬のように自然に適した様態、自然と共存してゆくためのものである。だが本来あるべきこの発展から人は外れているように思われる。農耕のための土地の開拓、科学文明発達のための地球資源の異常な使用。これらのすべてが自然に従うというよりも、自分らの手で世を変え便利な世につくりかえていこうとしているようにみえる。だからこそ思うのだ。便利さを追求するあまり馬、車と歩くという行為を怠り人はいずれ歩くことすら忘れてしまうのではなかろうかと。手間の多くが省かれ、幸と富のあふれる潤沢な生活が日常茶飯事となる。そうした世界が予見できるのが今日の人類の有様だ。だがこうも思う。科学文明による快適さを求めるのも生物として当然であるかもしれないが己の感受性を磨くのは鉄と電気(エレキ)ではなく、味彩と香り豊かな自然ではなかろうか。人類史は今ここでそれを感じ、有意義な“手間”というのを考えるべきなのではなかろうか。単に便利さのみが人生の至福ではなかろう。エルフという空想の種族がある。北ヨーロッパの民間伝承に登場するもので、北欧神話におけるかれらは自然と豊かさをつかさどる小神族である。森や泉に住むとされ、自然と共存している種族だ。もちろん伝説上の種族であるが私はエルフのようにあれたらと思う。エルフの生き方こそ私の思うものであり理想である。しかし、人々は伝説のようになれるのだろうか。今の便利な世になじんだ我々にとって今から有意義な“手間”を思い出しその中で生きる喜びを感じ心を磨いていくことはできるのだろうか。エルフのように生きるにはどうしたらいいか。それについて考えていく。

 第一に“手間”から得るものを今一度感ずることにより科学文明への過剰な執着を避けるという方法がある。だれしも一度は自分の血肉をもってして動き、自然の未知を知る喜びを知っているはずである。今日でも登山が世界中で行われていることがそれを示唆する一つの証拠である。“山に登る”という手間のかかるものの中にも人々は豊かさと喜びを感じている。こうしたように、今まで忘れていた自然の豊かさを振り返る機会をつくるべきなのではなかろうか。今の社会人は異常なほどに多忙である。特に不景気とされる今の社会では残業・職探し・他に受験勉強と人々は時間に追われてしまっている。そうした環境下においては少しでも手間を省きできるだけ便利にすごしていきたいと思うのは当然のことといえよう。むしろそういった一刻が己を左右するという状況で手間を楽しむということのほうが異常である。便利さへの依存の原因は現代社会のせわしなさにあるだろう。今の社会の失態は民に時間の余裕を与えていないことにある。ドイツの哲学者ニーチェはいった。「わたしが神を信ずるなら、踊ることを知っている神だけを信ずるだろう。」実際にニーチェは踊るわけではないが、頭脳ではなく体を動かし自分の中の抑圧を解放していく感覚を、踊りの高揚感として実感せよということである。この考えは肉体感覚だけでなく、日々の発見の喜びや豊かな感性にも同様のことをいえる考えだろう。そうとも今一度便利さ以外にも“生”の喜びをおぼえるあの感覚を感じる必要がある。そのためにもまず異常にせわしないこの社会を根幹から変えていく必要があるだろう。そうすればおのずとエルフの生き方に近づくはずである。

 第二の方法に科学文明の中でも本来の生きる喜びを感じられるようにするということがある。今までの私の説明ではまるで社会が悪、自然が善というようにも思われてしまうものであるが私はそんなことは毛頭考えていない。勧善懲悪をなしてゆくつもりではない。むしろ文明は多くの恩恵を我々にもたらしていると思う。自然に勝るとも劣らない恩恵だ。ロボット工学による義手の開発や食品の安全のための加工、水の消毒などが恩恵の例である。その上、利便さを追い求め一途に文明を発展させてきた人々の歴史を尊くも感じる。だからこそ文明に依存することなく“手間”と“文明”矛盾しているようにもみえるこれらを共存させていかなければなるまい。ビル街の屋上に緑の広場をつくったり、公園を増やし、自然を取り入れたりすることもこの共存に一役かっている。こうしたこころみに望み利便と手間との適度な共存をしてゆけばなにかが生まれ出でるはずだ。

 利便さにあふれた生活はたしかにちょっとしたゆとりをもたらすものであるかもしれない。また手間を省くというのは人類の古来からの心意気ともいえる。しかし自然の魅力を感じ有用な手間をつくることにも大いなる意味がある。それを思い出すことが我々の課題であり使命である。


順位題名ペンネーム得点字数思考知識表現文体
1踊りたまえ大地の子らよおむふ92259471879484
2人間が時間に追われるようになったのは。snow boy90125264778887
3untitled(「・ω・)「がおー87128558677790
4過去か未来ではない今という選択arugebak83166157879980
5古きよきものVS斬新奇抜音楽大好き少年83116154748387
6効率的に生きることいちごサクラ83111954646987
7弟と私とたまに母とたまぁに父S-124080126356598787
8歩いてはじめてわかることポチト8085457717489
9自分なりの生き方をファラオ7883054587192
10ゴミを活用できる人AIRIOKA7676447627389



4月の森リン大賞(高1高2高3社の部147人中)

人の死は心の死
LOLLIPOP

 脳死にまつわる社会問題に我々が今悩まされている原因は、人間の死に対しての私たちの認識や理解の混乱のように思われる。心臓死は、血流が途絶えることで全身の生命活動が停止し、身体の一部がまだ動いているということはない。しかし脳死の場合は、脳の活動が停止したとしても、全身の生命活動の停止がそれと同時に起こるわけではない。人格はなくなってしまったのに心臓は動き続けることができ身体は生きている。その人の人格はないのに身体は生命活動を続けているという状態は死であるのか。人の死について、また死の扱いについてよく考えるべきだと思う。

 そこで、脳死状態にある人から正常に動いている臓器を他へ提供することがあるが、この時のその人の人格を考えてみたい。考えること話すことなど人としての人格を失った人の了解なしで、勝手に臓器が取られてしまう。もし、身体の生命活動の停止を人の死ととらえるならば、この臓器提供という行動は全く問題ではない。しかし、この行為に対してためらいの意があるために議論されているのが今の日本の現状である。その人の人格の死は、身体が動いていても死になるのかと悩まれている。植物や動物には人間の人格に値するものはおそらくないであろう。それらは、自然の中で生命をつなぎとめるために、共存するために生きていると思うからだ。しかし、人間は他の生き物にはない能力が備わっており、特に心というものがある。これは、人間と他の動植物との大きな差だと思う。人間らしいと言われる根源には、おそらく心があるかの相違があると思う。人の優しいとか意地悪だとか性格すなわち人格の基となるのは心だろう。そして、この心というのは決して目に見えるものではない。その人自信を感じるのは心である。そのために、考えや思いを伝える働きを支えている脳が死んでしまうとその人の人格は勿論、心も死んだことになる。人と動植物の大きな違いである心が失われた身体は人間であるのに人間味を失ったまま身体だけが生きていることになるので、私たちはこの状態を人の死だと割り切って言えないのだ。

 脳死患者の臓器移植で死の扱いについて考えてみる。脳が死んでいても心臓が動いている限り他の臓器も活動しているので生物的に生きていることになる。新聞である家族の一人の脳死患者に臓器を移植して長期間、身体だけ生きることになったという記事を読んだことがある。身体的生命は今のテクノロジーのおかげで他者の臓器に支えられてリレーのように生をつなぎとめることができる。しかし、私が読んだ家族は身体だけでも動いてるのだから意地でも死なすまいというように思えて、脳死者本人のためなのか疑問に感じた。死と生の中間にいる人にとって何が一番良いのかは本人に聞かないと分からない。だが、死というものは必然的に誰にでも訪れることであり、自然の営みの中で私たちが生まれたように、死も自然の成り行きのままに迎えるのが望ましいのではないかと思う。

 ますます医療のテクノロジーが発展し続ける非人間化する世界の中で生きていることを自然を通して冷静に考え、死について向き合うべきである。人の死は、生命的な死ではなく、人格の死である。脳死も心臓死も人格が喪失した時点で人の死と捉えることができると思う。しかし、その人が周りの人々の心に残したことは消えることはなく、その人を思う心の中に生き続けるのである。


順位題名ペンネーム得点字数思考知識表現文体
1人の死は心の死LOLLIPOP92140071828596
2あなたは学生ですか?カエル89101066889192
3手間が導く幸せBABY★BLUE87144858869492
4人間の内面的部分さくら86107959898887
5隠れる心理とサングラスいさせ85137661727581
6マーブル状に存在しているくま王子85115362607583
7ゴミを生かすメグ84133352667980
8さて十九世紀のまいう8392758698393
9知る喜びちこちこ83111252708189
10技術と人間ゆうちゃり~8399153807690




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