オオイヌノフグリ
作文の学習が、本格的に考える勉強になるのは、中学1年生からです。
小学6年生でも、結びの感想の部分を一般化の主題として大きく考えるという課題はありますが、まだ本格的なものではありません。
小学生の作文は、題材(実例)が中心になるので、感想はまだ脇役なのです。
しかし、中学生や高校生の指導に進む見通しがあって初めて、小学6年生の指導も充実した教え方ができます。
近年の中学受験の作文では、入試の作文課題で、意見文を書かせるところも出てきました。
例えば、あるテーマについて自分の意見を書き、その理由を書き、その理由の裏付けとなる体験実例を書くというような書き方です。
意見の書き方は、大きく分けて3つあります。
第一は、良いか悪いかという意見の書き方です。
これは、言葉の森では、是非の主題と呼んでいます。
よいか悪いかという意見を書いたあとの構成の仕方は、その意見の理由を書くという書き方です。
初期の段階では、この理由を書くという書き方ができず、単なる実例を書いてしまう人がかなりいます。
理由を書くためには、抽象的なことを考える語彙が必要になるからです。
意見文の書き方の第二は、「べき」という書き方です。
これは、言葉の森では、当為の主題と呼んでいます。
「どうするべきか」という意見を書いたあとの構成の仕方は、その方法を書くという書き方になることが多いです。
方法を書くときに大事なことは、方法の幅を広げることです。
中学生や高校生が書く方法の多くは、個人の心構えのような人間的な方法だけになりがちです。
心構えのような方法だけでは、方法の幅が広くなるので、社会的な方法も必要になります。
中学生や高校生が最も身近に感じる社会的な方法は、学校教育のあり方です。
日常的に学校教育に接しているので、そのよい面も悪い面も具体的にわかるからです。
社会的な方法は、背伸びをせずに、自分のよく知っている社会の分野から始めていくことが大事です。
意見文の書き方の第三は、「問題」という書き方です。
今の世の中で、何が問題かという問題提起をする書き方です。
言葉の森では、これを社会問題の主題と呼んでいます。
「○○が問題だ」と書いたあとの構成の仕方は、その原因や対策を書くという書き方になります。
原因には、大きく分けて、社会的空間的な原因と、歴史的時間的な原因とがあります。
社会における問題の種類は多様ですが、原因の種類はかなり限られています。
しかし、同じような原因を書いたとしても、その裏付けとなる実例を多様なものにしていけばいいのです。
社会問題の主題の発展したものが予測問題の主題です。
これは、今の問題を書くだけでなく、その問題が解決された先に生まれるであろう新しい問題を予測する書き方です。
これを、言葉の森では、予測問題の主題と呼んでいます。
予測問題の主題に対する構成の仕方は、対策を書くということです。
しかし、具体的な対策を書くためには、予備知識が必要です。
だから、対策は、対策の方向として考えていけば十分です。
対策の方向は、大きく分けて、自主、民主、公開、発明というところで考えられます。
社会的な問題の対策は、社会的に考えられがちですが、実は社会問題の解決の多くは、新しい発明によってなされました。
だから、発明という方向も、社会問題の対策のひとつとして考えていく必要があるのです。
意見文の書き方は、小学6年生では、まだ練習しません。
しかし、教える先生が、そういうことも教えられる見通しで作文指導をしていることが大事です。
スミレ
公立中高一貫校の受験作文の課題は、昔は牧歌的なものでした。
「小学校時代の思い出」というような誰もが書ける課題が出されていたのです。
しかし、こういう課題は、事前の準備ができれば、誰でも上手に書くことができます。
そのため、次第に、文章を読ませてその感想を書かせるようなかたちの作文課題になりました。
しかも、複数の文章を読ませて、その共通性の面から感想を書かせるような凝った課題を出すようところが増えてきたのです。
この理由の第一は、採点が大変だったからです(笑)。
易しい課題で合格圏内にある作文をすべて読むというのでは、採点者の負担が大きすぎます。
そこで、難しい課題で、一応時間内に規定の字数まで書けた作文に絞って、採点をするという試験の方法になったのです。
かなり昔、東大と京大が、学部によってですが、入試に小論文の課題を出した時期がありました。
それらの問題は、かなりいい問題だと評判がよかったのですが、やがてその入試はなくなりました。
理由のひとつは、問題を作るのが大変だったからです。
もうひとつの理由は、やはり採点が大変だったからです。
採点の負担を解決する方法は簡単です。
文章の自動採点を導入すればよいのです。
そうすれば、問題の作成も、それほど凝る必要はなくなります。
現在、ChatGPTは、文章を要約することも、簡単なメモを文章化することも、長い文章を短くすることも、長くすることも、日本語で書くことも、英語で書くことも、関西弁で書くことも自由にできます。
このAI技術を応用すれば、文章の採点はすぐにできます。
その方法は、こうです。
作文には、小学生の書いたものから、中学生の書いたもの、高校生の書いたもの、大学生の書いたものなどいろいろな年齢の生徒が書いたものがデータとして多数あります。
それらを読み取って、その作文が、何年生ぐらいの生徒が書いたものかを推測させればいいのです。
すると、大学入試の作文でも、中学生レベルのものから、高校生レベルのものや、とっくに大学生レベルになっているものまで幅広くあることがわかります。
ただし、こういう評価をするためには、作文の字数は1200字以上であることが必要です。
字数が短いと、誤差が大きくなるからです。
また、できれば、1本の作文ではなく、数本の作文を書かせる必要があります。
書く生徒は大変ですが(^^ゞ、採点する方はAIですから、一瞬にしてできます。
この試験を実施するためには、手書きOCRの機能はまだ不十分でしょうから、試験会場ではポメラのような端末を配備して、全員が一斉に作文のテキスト入力をする必要があります。
いずれ、大学入試では、こういうデジタル作文試験が導入されるようになると思います。
高校入試や中学入試でも、できないことはありません。
更に先のことを考えると、口頭試問もAIで評価することができます。
AIで、大体の基準以上になった人だけを、人間が実際に作文を読んだり、面接をしたりすればいいのです。
しかし、更に先のことを考えると、そのうちに、入試で生徒を採点すること自体が必要でなくなります。
それは、将来の学校は、オンライン化するからです。
現在、入試があるのは、リアルな学校に入ろうとするからで、リアルな学校には決まった数の座席しかないからです。
その座席の数に合わせて入試が行われています。
しかし、オンラインであれば、デジタルの座席の枠に制限はありません。
学生どうしの交流の場としては、時どき遠足やサマーキャンプを行えばいいのです。
これが、大学の人気を最も左右するイベントになるかもしれません。
オンライン化された学校では、国境はありません。
Zoomの授業でも、翻訳機能を使えば、どの国の人でも参加できます。
遠足やサマーキャンプのリアルな交流の場では、ポケトークのようなものを使えばいいのです。
こういう機器は、今後もっと進化してウェアラブルになり、使用している感覚がなくなります。
リアルな海外留学というのは、そのうちに死語になります。
そのかわり、リアルな海外遠足や海外合宿が普通になってくると思います。
以上、だいぶ先のことまで書きましたが、大事なことは、これからの勉強は、知識の詰め込みと再現ではなく、考える力が中心になるということです。
更に、考える力に創造力の加わったものが、本当の学力になるということです。
今、小中高生と保護者のみなさんは、そういう未来の姿を想定して、子供の教育を、考える力と創造する力を育てる方向に向けていくことが大事になっていると思います。
※意見文の書き方の記事を書こうとしましたが、その前提として受験作文の話を書いたら、それだけが長くなってしまいました。
意見文の書き方については、次回の記事に載せます。