ログイン ログアウト 登録
 知能を高める教育(その4) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 181番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/26
知能を高める教育(その4) as/181.html
森川林 2007/09/05 09:52 
 抽象的に考える能力とは、現象の背後にある本質を考える能力です。
 先日、高校生の生徒が夏休みの化学の宿題を見せてくれました。どのページもほとんど計算問題です。確かにこういう練習問題を多数やれば、計算には慣れるだろうとは思いましたが、あまり知的な勉強とは思えませんでした。
 やればできる問題に取り組むのは、時間の無駄です。私がもしそういう宿題を出す立場の先生だったら、次のような宿題を出します。「この問題集を答えを見ながら読んで、自分が答えを理解できなかった問題だけを書き出してくること」。できる問題を作業的にやるのではなく、できない問題を自覚することこそが真の勉強だからです。ところが、子供も先生も親も、多くの場合、できる問題を解いている姿を勉強している姿と思いがちです。
 しかし、できなかった問題にも二種類あります。単に記憶していないためにできなかった問題は、本当の意味でできなかった問題ではありません。答えを見ればすぐにわかるような問題は、こういう問題です。そうではなく、本当にできない問題とは、その問題の背後にある本質がまだ理解できていない問題のことです。このような問題ができるようになったとき、人間の抽象能力が一つ前進したと言えるのです。
 これは、化学や数学のような問題に限りません。むしろ、学校の勉強では評価される機会があまりない分野にこそ、このような抽象能力が必要とされてくるのです。
 この抽象能力を高める一つの有効な方法が読書です。読書は、言語によって物事を抽象化します。しかし、先に挙げた夏休みの計算の宿題のように、抽象能力をあまり高めない読書もあります。それはどういうものかというと、現象こそ多様に見えるがその背後にある本質にあまり変化がない読書です。これは計算練習と同じで、見た目には次々と新しい問題を解いているように見えますが、やっていることの本質はもうすっかりわかっているという読書です。
 読書の目指す方向は、抽象度の高い読書、つまり難しい本を読むことにあると私は思います。また、自分が既に知っている分野だけでなく、未知の分野に読むジャンルを広げていくのが読書の発展の方向です。
 しかし、人間には成長に応じた発展段階があります。小学生のころから、難しい本や未知の分野の本を読ませようとすれば、かえって読書量が確保できなくなるというマイナス面の方が大きくなります。小中学生のころは、楽しい本や感動できる本を中心に、何しろ多読をするということを重点にする必要があります。多読によって、そのあとの読書の発展につながる言語能力の基礎ができるからです。しかし、単なる多読でなく、難読を志向した多読、つまり自分の興味の持てる分野で説明文や意見文に広がる読書をしていくことが小中学生の読書の課題となります。
 高校生や大学生のころは、難しい本を読める時期です。このころになると、難しいことそのものに挑戦したいという知的好奇心が旺盛になってきます。この時期に、歯が立たないような本に挑戦することで本当の読書力がついてきます。しかし、これもただ難読をするだけでなく、その後の新分野に広がるような未知のジャンルに広がる難読をしていくことが大切です。
 多読→難読→新読という形で、人間の抽象能力が形成されていくのです。(つづく)



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。


コメント欄

コメントフォーム
知能を高める教育(その4) 森川林 20070905 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
いうえお (スパム投稿を防ぐために五十音表の「いうえお」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。

コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習