ログイン ログアウト 登録
 未来の教育は、平均的な知識を詰め込む教育ではなく、各人の個性を伸ばす教育になる――発表学習のすすめ Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 3727番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
未来の教育は、平均的な知識を詰め込む教育ではなく、各人の個性を伸ばす教育になる――発表学習のすすめ as/3727.html
森川林 2019/05/18 20:11 

 これまでの工業時代の教育は、国語算数理科社会という主要教科に見られるような平均的な知識を詰め込む教育でした。
 なぜそれが必要だったかというと、人間が機械の歯車の一部として仕事をするためには、どの部分の歯車にもなれる平均的な能力が必要だったからです。

 だから、大人になってからの実生活でほとんど使うことのなかった知識――大化の改新の年とか鎌倉幕府の年とか、植物の導管と師管の区別とか、フェノールフタレイン溶液の用途とか、そういう雑多な知識をみんなが同じように学んできたのです。

 これは、否定的な意味で書いているのではありません。
 工業時代までは、そういう平均的な何でもひととおりできる学力が必要だったから、誰もがそれを目標にして勉強をしていたのです。
 そして、その成果が、現在のような豊かで便利な工業社会を生み出したと言えます。
(もちろん工業化の行き過ぎが、環境の破壊や文化の破壊につながった面はありますが。)

 しかし、今、その平均的な詰め込み教育の前提となる社会が、大きく変化しています。
 数年前、海外の入試で、スマホを使ったカンニングが問題になったことがありあます。
 また、これも海外の話ですが、大学生のレポートで、他人のレポートをコピーしたものが問題になったことがあります。
 大学側は、これらの対策として、試験会場にスマホ持ち込み禁止とか、レポートのコピーを見破るソフトの開発とかいうところに力を入れていったようです。

 しかし、本当の問題は、学生がカンニングやコピーをしたことではなく、カンニングやコピーで済むような問題で試験をしているところにあるのです。
 学生が社会に出て仕事を始めるとき、いろいろな情報を調べたり、ほかの人のいいところを真似したりということは当然あります。
 もちろん、そこに独自の創造性がなければ、社会から評価されることはありませんが、しかしその独自の創造性の前提としての調査や模倣は当然あるのです。

 だから、理想の試験とは、何を調べても写していいから、そこから自分らしいものを作り出す可能性があるかどうかということを見る試験です。
 しかし、それは、試験というよりも、むしろ直接的な実践そのものです。

 つまり、その人が世の中に個性的創造的なものを生み出しているかどうかということが、日々問われているのが、その人の人生なのです。
 そして、誰が問うのかといえば、それはその人自身です。
 なぜなら、自分が新しいものを創造することが、その人の生きる喜びの大きな部分を占めているからです。

 工業時代の教育と、工業時代のあとの教育の違いはここにあります。
 もちろん、世の中には、平均的な知識を満遍なく身につけることを個性とする人もいます。
 そういう役割は、どういう世の中になっても必要だからです。
 だから、平均的な知識を否定するのではなく、個性を伸ばすという大きな枠の中で平均的な知識を習得する教育も考えていくということです。

 では、個性を伸ばす教育は、具体的にどのようなやり方で行われるのでしょうか。
 その答えのひとつが、発表学習です。
 子供たちが、自分の好きなことを自由に研究し、それをみんなに教える(発表する)という勉強の仕方です。

 発表学習クラスの子供たちの発表を見ると、ほとんどの子が毎週、ユニークな面白い発表を行っています。
 これらの子供たちは、学力も十分にあります。
 だから、普段の勉強以上の独自の研究発表ができるのだと思います。

 しかし、発表学習は、自分の好きなものがある子なら、誰でも取り組めます。
 極端なことを言えば、ゲームの好きな子は、ゲームを研究し発表してもいいのです。
 好きなゲームをただやっているだけなら、あまり進歩や向上というものはありません。
 しかし、それをほかの人に発表するとなると、そこに個性や創造性を作り出さなければならなくなります。
 それは、個性的、創造的なものでなければ、ほかの人は興味を示さないからです。

 この構造は、実は、社会そのものの仕組みと同じです。
 社会では、誰でも、自分の好きなことを何でもやっていいのです。
 しかし、それが人に評価されるかどうかは、そのやっていることが個性的創造的かということに関連しています。

 人間は、自分の好きなことをやるのはうれしいものですが、それを人から評価されるのは更にうれしいものです。
 また、最初は人から評価されるのがうれしいから、個性的創造的にやっていたものが、やがてその創造の面白さが発展して、人の評価以上に創造の喜びが動機となって自分の好きなことを続けていくようになります。

 そのように、すべての人が自分の個性を創造的に伸ばしていくのが、未来の社会の人間の生き方になります。
 発表学習とは、そういう未来の社会を生きるために、第一に必要となる教育です。

 現在の入学試験は、多数の受験生を短期間で採点しなければならないという技術的な制約から、ペーパー試験が中心になっています。
 紙の試験で評価できるものは、基本的に知識の詰め込み度合いだけです。
 その生徒の思考力や表現力は、作文試験や面接試験である程度評価できますが、その生徒の個性や創造性を短期間で評価できる試験方法はありません。

 だから、近年の東大の推薦入試では、何か月も時間をかけて、受験生の個性的な創造を評価する仕組みにしたのです。

 この個性と創造性を評価する仕組みが、将来の試験の主流になります。
(ただし、将来は試験ということそのものがなくなっていくと思いますが、それは別の話なのでまたいつか。)

 会社の就職試験でも、会社が本当に採用したい人材は、学力は普通にまともにできている程度でいいから、個性と創造性と社会性のある人材です。
 同じように、将来の学校の入学試験も、学力は、センター試験なら8割、学校の成績ならオール4という普通の学力でいいとして、その学力の担保の上に、個性と創造性と社会性(コミュニケーション力)を見るものになっていきます。
 それは、大学入試そのものが変わるので、それに応じて、高校入試も、中学入試も変わっていくからです。

 発表学習クラスに参加する子供たちが、いろいろな入試に臨むころは、まだそういう試験は主流にはなっていないかもしれませんが、しかし、将来の教育の先取りをしている気持ちでこれからも個性的な発表をしていくといいと思います。



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
発表学習クラス(0) 2020年度入試改革(0) 

コメント欄

森川林 2019年5月18日 20時31分  
 いい学校を目指す理由の第一は、いい友達と出会い知的な刺激を受けることにあります。
 勉強の中身は、今はどこでも手に入るので、いい授業とかいい先生とかいうのはあまり重要ではなく、いい友達というのが最も重要です。
 寺子屋オンラインの作文クラスや発表学習クラスは、学校とは違いますが、ある程度それを実現していると思います。
 ある程度というのは、まだそのコンセプトが十分に理解されていない面もあるからですが、いずれコンセプトもみんなが共有できるようになると思います。

nane 2019年5月18日 20時38分  
 発表学習は、うちの子が小学生だったら、第一にやらせたかった勉強です。
 また、寺子屋オンライン作文も、絶対にやらせたかった勉強です。
 昔は、個別電話指導しかなかったので、その方法でずっと勉強していましたが、子供は(特に学年が上がるほど)、友達どうしのやりとりの中で成長していくからです。
 その子供どうしの切磋琢磨をうまくコントールして活性化させていくのが先生の役割です。


コメントフォーム
未来の教育は、平均的な知識を詰め込む教育ではなく、各人の個性を伸ばす教育になる――発表学習のすすめ 森川林 20190518 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
つてとな (スパム投稿を防ぐために五十音表の「つてとな」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
発表学習クラス(0) 2020年度入試改革(0) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習