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暗唱の目的は記憶ではなく反復 as/720.html
森川林 2009/12/25 12:41 


 暗唱の自習や音読の自習は、親がかつて子供時代にしたことのないものです。これが、九九などの学習との違いです。このため、子供の実態に合わないやり方をしてしまいがちです。

 特に暗唱は、その暗唱という言葉から、覚えることが目的だと思われがちです。覚えることが目的で、その方法として反復があると考えてしまうのです。すると、反復という方法は、手段であって、何しろ覚えればいいということになります。そして、理屈で覚えようとしてなかなか覚えられないから挫折するというのが、中学生高校生や大人に多いパターンです。

 また、小学校の低中学年に多いパターンとして、やさしい文章で短ければ数回で覚えられるので、それで覚えて終わりとしてしまうことです。このような音読の仕方では、暗唱した文章はすぐに忘れてしまい身につきません。また、逆に難しい文章になると、これまでと同じように簡単にはできないので、読むことが嫌になってしまうということが起こります。


 暗唱の意義は、四つ考えられます。

 第一は、記憶力を高める面があることです。暗唱していると、長く難しい内容でも自分には覚えられるという自信がつきます。これが、その後の勉強にとって大きなプラスになります。しかし、これは暗唱の二義的な意義です。

 第二の最も大事な意義は、理解力を高めることです。比喩的にいうと、これまで、スモールステップの学習で、小骨を抜いて、火にかけて、やわらかくして、味つけをしたものを少しずつしか食べられなかった子供が、骨ごと丸ごとバリバリと食べる咀嚼力を身につけるというような理解力がついてくるのです。これが、英語、数学、国語などすべての教科の学習に通じていきます。

 第三に派生的な効果として、理解のための語彙が、暗唱の反復によって表現のための語彙に進化するということがあります。読んで理解はできるが、自分では到底書くことも思いつかないというような言葉が、自分の表現として自然に使えるようになるのです。

 第四にもう一つの派生的な効果として、発想力が豊かになるということが挙げられます。暗唱がスムーズにできるようになると、左脳で理解して音読していた言葉が、右脳に蓄積されたイメージから引き出されるようになります。このような暗唱をしていると、左脳では限定されていた単独の言葉が、右脳ではいろいろな異なるイメージに干渉されて豊かになってくるのです。ちょうど夢を見ているときのような自由奔放なイメージが言葉と一緒に出てきます。これが発想力です。


 これらの意義を実現するために大事なことは、暗唱を、記憶することを目的とするのではなく反復することを目的として取り組むことです。その反復の回数の目安は、経験的に言うと100回です。しかし、100回同じ文章を音読するということは、現代ではなかなかできません。

 言葉の森の暗唱の方法は、毎日10分間やっていくと、30回を1日、10回を4日、4回を7日から10日読むことになるので、結局900字のどの文章も100回ぐらい読むことになります。

 最初から900字の文章を単純に100回読むということももちろんできなくはありませんが、それでは、子供にとってはかなり苦しい勉強になってしまいます。毎日10分間の勉強で1ヶ月で900字が暗唱できるという方法でやっていくことで、無理なく反復の学習ができるのです。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)



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