ログイン ログアウト 登録
 暗唱で言葉を身体化することによって読書力がつく Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 973番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/2/16
暗唱で言葉を身体化することによって読書力がつく as/973.html
森川林 2010/07/25 14:46 



 長い文章を暗唱をしていると、途中から眠くなります。特に眠くなるのは、だんだん暗唱ができるようになってきたときです。暗唱のし始めや、暗唱がすっかりできるようになったあとは眠くはなりませんが、暗唱がもう少しでできるようになるというころが、いちばん頭脳に負荷がかかるようです。

 脳の研究によると、音読は脳を活性化させるそうです。また、すっかり覚えた文章を音読しているときは、逆に脳はリラックスするそうです。ここから考えると、暗唱ができるようになる直前は、脳が、活性化でもリラックスでもない一種独特な状態になるときのようです。


 その独特な状態とは、文章が身体化する過程という状態です。50字程度の短い文章は、文節でいうと7文節以内であることが多いので、短期記憶で処理できます。しかし、300字から900字の長い文章は、身体の外部にあるもので、それを内部に取り入れるためには、普通は、文章を部分的に理解していくしか方法がありません。暗唱は、この長い文章を部分的に理解して消化する方法ではなく、長い文章のまま丸ごと自分の内部に取り入れようとする方法です。

 言葉は普通、道具として使われているので、言うときは言っておしまい、聞くときは聞いておしまい、という使われ方をします。例えば、犬がいることを相手に伝えようすれば、「犬がいる」といえばそれで済みます。また、相手から、「犬がいる」という言葉を聞いて理解できればそれで言葉の役割は終了します。長い文章の場合も、この小さい単位の部分的な理解を次々と連続させていくだけです。

 しかし、暗唱は、このような道具的な使い方ではなく、言い続ける、聞き続けるという行為を反復することですから、この反復を繰り返す中で言葉が道具以外のものに変化します。言い続けることで言葉が身体化し、聞き続けることで言葉が世界化すると言ってもいいでしょう。


 視覚や聴覚は、生まれつき身体化しています。これに対して、視覚や聴覚を補う眼鏡や補聴器は道具ですから、必要に応じて簡単に取り外すことができます。言葉は、眼鏡や補聴器ほど簡単につけたり取り外したりすることはできませんが、視覚や聴覚ほど身体化していない道具です。

 視覚や聴覚は、身体の一部になっているので情動と直接的に結びついています。しかし、言葉と情動の結びつき方は間接的です。だから、映像や音楽は、だれにとっても同じように感情的な影響を与えますが、言葉は受け取る人の言葉の身体化の度合いによって感情への影響度が異なります。


 この言葉を身体化する過程が、暗唱です。言葉が単なる道具ではなく、身体の一部になるにつれて、言葉の感受性や吸収力が増していきます。これは、あらゆる道具に共通する性質で、道具が反復によって身体の一部になると、その道具による表現力が増すだけでなく、その道具の対象となる世界に対する感受力も増してくるからです。

 絵筆が体の一部になっている人は、世界を見るときも、その絵筆の表現力に応じて世界をより絵画的に見ることができます。音楽でも詩でもスポーツでも同じです。表現力が高まり、道具が身体化する度合いに応じて、表現の対象に対する感受性が増してきます。

 言葉の吸収力が増すと、本を読んだ場合でも、その本の内容がより早く深く自分の内部に消化されるようになります。暗唱は、単独でも効果がありますが、毎日の読書と結びつくことによって更に大きな効果が発揮できるようになるのです。


 創造と発表の新しい学力
総合選抜入試にも対応。探究学習を超えた、新しい創造発表学習。
AI時代には、知識の学力よりも、思考力、創造力、発表力の学力が重要になる。

同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
暗唱(121) 読書(95) 

コメント欄

コメントフォーム
暗唱で言葉を身体化することによって読書力がつく 森川林 20100725 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
たちつて (スパム投稿を防ぐために五十音表の「たちつて」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
暗唱(121) 読書(95) 
コメント1~10件
優しい母が減っ 森川林
あきろあさん、コメントありがとうございます。 子供は、もと 2/13
記事 979番
優しい母が減っ あきろあ
森リン先生の投稿をみて、母は甘やかしていいんだと、初めて気付 2/7
記事 979番
中根の担当する 森川林
YKさん、ありがとう。 私が子供にさせたいと思っていたのは 1/27
記事 5267番
中根の担当する YK
創造発表クラス面白くなりそうですね!イギリスの私立学校のカリ 1/27
記事 5267番
これからの学力 森川林
 書き忘れたけど、ひとりの先生が全教科、全学年を教えるという 12/9
記事 5233番
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 1月読 森川林
 最初に書いてある「昔、夏に食べたトマトはおいしかった。」は 2/7
国語読解掲示板
1月読解検定に あうせれ
問5のA⇒昔のトマトは青臭いがおいしかった。←× 本文1行 2/5
国語読解掲示板
2025年1月 森川林
●新年度の教材は、もう発行されています。 http 1/22
森の掲示板
Re: 中2の 森川林
 これは、読解問題の解き方の基本だから、よく覚えておいてね。 12/22
国語読解掲示板
2024年12 森川林
●新年度の教材 https://www.mori7 12/22
森の掲示板
中2の読解検定 毛利
問題2番のAが×なのが納得いきません。解説お願いします。 12/19
国語読解掲示板
2025年1月 森川林
2025年1月の教材のPDFがプリントできます。 http 12/17
森林プロジェクト掲示版
創造発表クラス 森川林
創造発表クラスとプログラミングクラスの今後  創造発表 12/12
森川林日記
Re: 読解検 森川林
> 問一 B 2.3行目の「むっつりと」という文章が問題文に 12/12
国語読解掲示板
読解検定小六  あかそよ
答えに納得できないので教えてください。 問一 B 2. 12/9
国語読解掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習